F日記 spec.M

僕の彼女 16

相変わらずメールマガジン
そのまま転載だけど。
って言うか、今日は新しい記事
書く時間がないし疲れちゃったよ。
早く寝なきゃ。
*******************************
こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回からそろそろ少しずつ二人の関係が
進展していきそうな感じです。
でもまずは早速喧嘩です。
------------------------------------------------------------------
僕の彼女 16

大好きな彼女を泣かせてしまった。
それはまだ僕が彼女に想いを伝えられず、
ただ意地悪をして気を引こうとしていた頃のこと。
そんなことをしていても彼女の気を引けないことは
わかっていたはずなのに、僕にはそれしかできなかった。
その時も僕はいつもの調子で彼女に意地悪をしていた。
僕には、取り立てて悪い事をしたつもりはなかった。
ただいつもの意地悪をいつもの様にしたはずだった。
でも、彼女にとってそれは耐えがたい事だったのかもしれない。
僕がそれに気づいたのは、彼女が涙をこぼしたあとだった。

その日、僕は彼女といっしょに映画を見ていた。
「直も映画みたい?」
と彼女に言われた。
それは、一緒に映画を見ようという彼女なりの言葉だった。
僕には断る理由があるはずもなく、迷わず誘いを受けた。
そして僕達は二人だけで地下室に向かった。
彼女の家の地下室。
その部屋はただの地下室なんかじゃない、
まさに映画館と呼ぶに相応しい部屋だ。
その部屋には当然窓もなく、
薄暗いオレンジ色の照明だけが部屋を照らし出している。
部屋に入ると一番に目にとびこんでくるのは、
いつもあの大きな白いスクリーンだ。
小さな映画館のそれよりも幾分大きく感じるほどの大きさだ。
そして部屋を囲む様に壁に取り付けられた
大きな無数のスピーカーが印象的な部屋だ。
巨大なスクリーンのおかげで
無駄に広い部屋の真中の特等席に
ソファが並べられている。
僕はここで映画を見るのは初めてじゃない。
僕が面白いビデオやDVDを手に入れたとき、
または彼女が買ってもらったときに、
何度もここで一緒に見ていた。
こうやって二人で映画を見るのはいつものことだった。
その日もいつもの様に地下室に降りてきた。
「ところで、何を見るの?」
僕は一足先にソファに座ってから尋ねた。
彼女はスクリーンとは反対側の壁際にある
大量のDVDが収納された棚の前で、
目的のものを探していた。
「え~っとね…」
彼女はそう言ったきり黙りこんでしまった。
彼女は自分の伸長よりも高い棚の上の方を見上げて
きょろきょろしていた。
「見付からないの??」
と聞いた。
「うん…。どこにあるか知らない??」
と彼女は僕に聞いてきた。
何を見たいのかわからないのに、
それがどこにしまってあるかなんて
僕が知るはずもなかった。
でも、僕にもひとつだけわかることがあった。
「もっと下の方にあるんじゃない?」
ということだ。
比較的長身の叔父さんでもなかなか手の届かない
棚の上の方に、彼女の見たがるようなものが
しまってあるはずがないんだ。
彼女の見たがるものは小柄な彼女でも手の届く高さに
しまってあるんだ。
昔、叔父さんがそう言っていた。
僕がそう言ってあげた直後、彼女は目の前の棚から
一枚のDVDを引っ張りだした。
灯台下暗し、そんな諺があるとはいうものの、
すぐ目の前にあることに気づかず、
見当違いのところを探し続ける彼女のボケっぷりが
可愛いんだ、なんて思ってしまうのは僕だけなのだろうか。
「これだよ、これ」
彼女はそう言いながら、わざわざ僕のところまで
嬉しそうにぱたぱた走って持ってきてくれた。
きっとこれを見るのがそんなに楽しみだったんだろう。
でも、パッケージを見た僕の口から
思わず言葉が漏れてしまった。
それも少し飽きれてしまったような口調で。
「またこれ見るの??」
それは彼女の大のお気に入りのアニメだった。
僕も好きだったから、彼女と一緒に何度も見たことがある。
でも、あまりに何度も見過ぎちゃうと
飽きてしまうんだからしかたがない。
それにもかかわらず、彼女は嬉しそうににこにこするほど
見るのが楽しみらしい。
それほど好きなんだろう。
僕の言葉はそんな彼女のご機嫌を損ねてしまったらしい。
「嫌だったら帰れば良いでしょ!?
私一人で見るもん!」
僕は慌てて弁解した。
「いや、そうじゃなくって、
美奈は本当にそれが好きなんだね~って思って…」
彼女の睨むような視線を見れば、
全然ごまかしきれていないことは明らかだった。
「ふ~ん…まぁ別に良いけど~」
彼女はそう言いながら、再び後ろの壁の方に戻り、
DVDをプレーヤーにセットした。

結局僕も一緒に見ることにしたけれど、
始まってみるとやはり何度も見たことのあるストーリーだった。
いまではもう昔のように集中して見ることは
無理というものだった。
ところが、彼女はそうでもないらしい。
ふと僕のすぐ隣に座っている彼女の方を見てみると
目はスクリーンに釘付けだった。
そんな、少し一人で退屈してしまっているときだった。
僕の目にティッシュが飛び込んできた。
そして思い付かなくても良いことを思い付いてしまったんだ。
僕はティッシュを一枚とると、
くるくるねじって先端を細長く尖らせた。
所謂紙撚りというものだ。
これは鼻に押し込みくしゃみをさせるための
どうでもいい発明だということはあまりに常識的なことだが、
僕はいまだにこれの威力を信じられないでいる。
そんなとき、ふと彼女の視線に気づいた。
いつのまにか一部始終を見られていたらしい。
「何してるの?」
と彼女に聞かれた。
「これって本当にくしゃみするのかな?って思って」
と彼女に紙撚りを見せた。
「するんじゃないの?わからないけど」
と彼女が言った。
「じゃあ試してみよう」
そして僕は試してみることにした。
自分で試せばよかったものを、
彼女で試してみようだなんて
僕の悪戯心が騒ぎだしてしまった。
そして僕は彼女の顔に狙いを定めた。
彼女も僕の視線から考えていることを察知したんだろう。
僕が最初の一突きを試みようとするや否や、
彼女は僕の手を払いのけた。
「嫌!何するつもりなのよ!?」
と彼女に睨まれてしまった。
そのとき、僕は大人しく引き下がっておけばよかったんだ。
でも実際は違った。
絶対にくしゃみさせてやる!
そんなどうでもいい闘志が燃え上がった。
僕達は二人がゆったり座れるソファに並んで座っていた。
僕は今度こそしっかり狙えるようにと
彼女の方に体をすり寄せた。
当然彼女は反対側に逃げた。
でも、すぐに逃げ場所を失い追い詰められた。
それでも彼女は立ち上がって逃げようとはしなかった。
彼女は再び手で僕の攻撃を阻もうとした。
だから僕は彼女の両手をがっしり掴んで抑え付けた。
すると彼女は肘掛の方に上体を逸し、
僕から顔を遠ざけようとした。
さらに僕は逃げる彼女を追って、一段と近付いた。
彼女の上に重なるように抑え付け、
背けられた顔を左手で捕らえた。
気がつけば僕は彼女を無理矢理抑え付けていた。
でも、そのときの僕にはそんなつもりはなかった。
彼女が本当に嫌がっていることにすら気づけなかった。
ただ、僕はいつもの悪戯をしているつもりだったんだ。
まさか彼女が本気で、
全力で抵抗しているなんて思いもしなかった。
ただ、僕はそんなことにさえ気づかず、
軽々と彼女を抑え付けてしまっていた。
「嫌だ!直、やめて!!」
そう叫ぶ彼女の声も、はしゃいでいる僕の耳には届かなかった。
そして僕は、無意味に等しい抵抗を続ける彼女の体で
じっくり試してみた。

しばらくすると彼女は遂に小さなくしゃみをした。
僕の顔めがけて遠慮なく。
とは言っても、身動きのとれない彼女には
どうしようもないことだ。
もっとも、彼女のくしゃみを嫌がるような僕ではない。
本当にこんなことでくしゃみをするんだという発見、
彼女にくしゃみをさせたんだというちっぽけな征服感、
そのとき僕は少し舞い上がっていたかも知れない。
そんなときだった。
「もういいでしょ?早くどいてよ…」
いつのまにか抵抗をやめていた彼女が
力なく口にした言葉は涙でかすれていた。
僕の心を激しく締めつけるその声を聞いたのは
ずいぶん久しぶりなように感じられた。
「ごめん…」
そう言って僕は彼女の体からそっと離れた。
そして様子を伺うように彼女の顔をちらっと見た。
顔を抑え付けていた手を退けると彼女は
すぐに顔を背けた。
ほんの一瞬だったけど、彼女の目から涙が溢れていたことに
僕はやっと気づいた。
僕が退くと彼女も静かに体を起こし、
僕に背を向け俯いて座っていた。
泣いていたのか涙を拭っていたのか僕には見えなかった。
「ごめん…」
しばらくの間、呆然と彼女の背中を見つめていた僕は
もう一度言った。
その言葉に反応したように
彼女は黙って振り向き、赤く染まった目で僕を睨みつけた。
そして立ち上がった彼女は僕を蹴飛ばし
部屋から飛び出していった。
僕は相変わらずソファに呆然と座り尽くして
走り去る彼女の後ろ姿を見つめていた。
ただ、僕は自分の愚かさに絶望していた。
彼女に蹴飛ばされた右足はまったく痛まなかった。
けれど、彼女の軽蔑するように睨み突けた視線が
僕の心を突き破りそうだった。
彼女の溢れる涙、掠れた声、それが僕の自責の念を駆り立てた。
僕は彼女が本気で嫌がり全力で抵抗していたことに気づくのが
あまりに遅過ぎた。
ふと我に返れば、一人暗がりの映画館のスクリーンに
彼女のお気に入りのアニメが映し出されていた。
僕の心中など知るはずもないスクリーンの中の女の子は
明るく元気に喋っていた。
本当なら彼女と一緒に見ているはずだったのに…。
僕はどうしようもない馬鹿なことをしてしまったんだと、
後悔するしかなかった。

それから、僕は彼女の部屋のドアの前に立っていた。
ノックしてみても返事はなかった。
けれど、なかに彼女がいることは間違いなかった。
ドアの前から何度も真剣に謝ってみた。
けれどそれがどれほど彼女の耳に届いていたのか
僕には知る術もなかった。
さっき、泣き叫んでいた彼女の声が僕の耳に
聞こえなかったように、
僕の声も彼女には全く届いていなかったのかもしれない。
でもきっと、そのときの彼女には僕の声が
耳障りでしかたがなかったんだろう。
「早く帰ってよ!馬鹿!!」
そんな叫ぶような彼女の声が部屋の中から聞こえてきた。
一瞬、頭の中が真っ白にでもなりそうな言葉だった。
「本当に、ごめん…」
僕は最後にそう言い残して、
のこのこ帰った。

家に帰ってみても後悔することしかできず、
その日の夜は遂にほとんど眠ることはできなかった。


続く
-------------------------------------------------------------------------
今回はかなり久しぶりの発行です。
1ヶ月以上は発行してなかったのかな?
本当はもっとこまめに発行したかったんですが…
思っていた以上にお仕事が忙しかったんです…。
まぁまだ大したお仕事はしていないのですが、
学生のときほど自由にできる時間がないんですよ…。
でもがんばって書いてみたした。
もっともっとペースアップしないと
お話が全然進んでないんですよね…。
書きはじめて1年以上も経ったのに、
二人はいまだに付き合い始めてもいないと言う
状況ですから…。
まぁとりあえずがんばってみます。

それにしても、今回のお話も
相変わらずダメダメだな~…
なんて落ち込んじゃいそうです…。
まぁでもその難しさが
面白かったりもするんですけどね。

そう言えば、現在の二人の状況を知りたい
なんてコメントを頂きました。
でもどうしましょう??って感じなんですよ…。
私も二人の近況がそんなに
はっきりしてるわけではないので…。
仲良く大学生やってるようですよ。

それにしても、
このお話を書くのは比較的楽です。
だって、次は何を書けば良いのかって
決まっているので、
ネタ詰まりなんて事にならないんですよ。
だから結構楽なんです。
ネタに詰まって詰まってどうしても出なくなっちゃうと、
やる気もでなくなっちゃうんですよね~…私の場合。
まぁでもあまりに膨大な日記があるので、
全部書くのは大変そうですけどね~…。
きっと読む方も大変なんでしょうね。

さて、次回のお話は、
二人が仲直りする辺りのお話です。
余裕があれば二人でデート、
なんて辺りのことまで書いてみたいですね。

メールマガジンの相互紹介、してみませんか?
その気のある方はメールください。
できるだけ早くお返事書きますから。
[メールマガジン紹介]
―――――†心の中の光と闇†―――――

詩だったり語りだったり
自分の言葉で自分の思いを表しています

高校入学 楽しみと不安 部活
日頃の日記、笑い話、ショックな事
他にも色々と好きなドラマ 影響された事
「仲間」という大切さ 「絆」の強さ

普段バカやってふざけてるけどこれでも凄い真剣
真剣に悩んで考えて吐き出せなかったものが言葉となって此処にあります
http://melten.com/osusume/?m=13377&u=21315

―†―†―†―†―†―†―†―†―†―

☆-- テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」--☆
    誰の心の中にも、その人だけの物語があるはず……
    「主婦と創作」はそんな「物語」を発表する場です
  連載小説からポエムまで、私たちの「物語」をお届けします
 作品の投稿もお待ちしています★あなたも仲間になりませんか?

★☆★ 小説を読もう! ★☆★
僕が思いついた小説などを、書いております
面白いか面白くないかはほかとして、がんばって書きます
http://melten.com/osusume/?m=21611&u=21315
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************


人気blogランキングへ
blog ranking
blog ranking

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 15

相変わらずメールマガジン
そのまま掲載だよ。
相変わらず人気がなくても、
自己満足でやってることだから
止めないよ。
********************************************************
こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回も相変わらずな二人のお話です。
まぁでも徐々に進展しているはずです。

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 15

ある6月の静かな晴れた日の朝。
その日、僕は早起きをした。部活の大会があるからだ。
いつもならそろそろ起きる時間。
でもこの日は既に家を出て駅に向かって歩いていた。
荷物のつまった重い鞄を二人分持って。
「なお~、早くしないと電車が来ちゃうよ~!」
と先の方で叫んでいる彼女の荷物と、僕の荷物の二人分だ。
いつもの様に彼女の家に迎えに行って、朝御飯を御馳走になった後、
一緒に出発した。そのときまだ彼女は自分で荷物を持っていた。
でも、それも出発してから数メートルの間だけだった。
「なぉ~、荷物重い~…」
なんて彼女が言ったんだ。
それは、僕に荷物を持ってと言っているようにしか聞こえなかった。
もちろん僕にはそれを断ることはできなかった。
そして身軽になった彼女が言った。
「急がないと電車に乗り遅れちゃうよ」
そして、僕を置いて一人でぴょんぴょんと走って行ってしまった。
でも僕は自分のペースでゆっくり歩いた。
だって会場に着く前に疲れてしまいそうだから。
それに、彼女が寝坊をするのも、時間通りに出発できないのも
いつものことだった。
だから、実は彼女には一本早めの電車の時間を教えてあげたんだ。
彼女はすっかり慌てちゃってるけど、でもこれでいいんだ。
正に僕の予定通りなんだ。
駅に着いた頃には、もちろん電車は行ってしまった後だったけれど、
問題ない。本当は次の電車に乗りたいんだから。
でも彼女は少し怒っていた。
「直のせいで電車に乗り遅れちゃったでしょ!?」
だって。
本当の事を教えてあげると怒りそうだからそれは黙っておくことにした。
「大丈夫だよ、一本くらい」
と代わりに言ってみた。
「もぉ~、直ってホント、バカじゃないの!?」
と何も知らない彼女は少し飽きれたように言っていた。
でも大丈夫、全部予定通りなんだから。
彼女が寝坊をしたのも、僕に重い荷物を持たせてくれたのも、
電車に乗り遅れたのを僕のせいにするのも、全部予定通りなんだ。
それから改札口の前で
「まだぁ~?」
なんて言ってる彼女の分も、
僕が切符を買ってあげるのまで全て予定通りだ。

朝早くの電車。とは言っても平日だから、あまり空いてなかった。
それでもたまたま一つだけ空いた席。
もちろんそこに座るのは彼女だ。
そして僕は当然のようにずっと立っていた。
重たい荷物を二つも持ったまま。
目的の駅に着くと先輩達の姿があった。
きっと一緒の電車に乗っていたんだろう。
「上村君優しいね~、私達の荷物も持ってくれる?」
なんて挨拶代りに言われた。
駅からまだ少し歩かなければいけないのに、
この上更に荷物を持たせようとは、酷い先輩もいたものだ。
「ダメダメ、上村君が優しいのは美奈ちゃんだけだから」
なんてからかわれたけど、おかげで荷物が増えなかった。
僕がそんなことを言われている間、彼女は他の女の子と話していた。
「美奈ちゃんは軽そうでいいね」
なんて言われた彼女がとんでもない言葉を口にしたのが聞こえた。
「良いでしょ~??良かったら荷物持って上げるよ」
きっとそれは僕に荷物を押しつけるってことを意味していたはずだ。
「いいよ、自分で持つから。
美奈ちゃんも自分で荷物持たないと上村君が可愛そうだよ」
なんて優しいことを言ってくれる女の子も世の中にはいるらしい。
「直は平気だよ、自分で持ちたいって言ってたんだから」
なんて事を彼女が言っていた。
だから、結局会場まで僕が荷物を運んであげても、
「ありがとう」
なんて言葉は言ってくれなかった。
でも仕方がないんだ…。きっと僕が悪いんだ…。
そんな彼女のことを好きになってしまったんだから…。

我が水泳部もプールサイドに場所を確保しおわると、
僕もやっと一休みできた。
でも。それもほんの一瞬だけだった。
「早く泳ぎに行こ」
と彼女が誘ってくれるんだ。
せっかく彼女がそう言ってくれるんだから仕方がない。
それにウォーミングアップにプールが使える時間も
限られているから、今行くしかなかった。
いつもは他の男子共の前で水着姿になるのを躊躇っている彼女も、
今日は違った。
彼女は家から下に水着を着込んで来ていたらしく、
僕の目の前で制服を脱ぎ始めた。
こういう所じゃ服の下に水着を着込んでいるのも、
男女構わずプールサイドでタオルだけで生着替えをする人の姿も
決して珍しい光景ではない。
でも、下に水着を着込んでいるとは言え、
やっぱり僕の目の前で制服を脱ぎ捨てる彼女の姿は
ちょっぴりエッチな感じがした。
周りを見渡せばそんな光景は珍しくないけれど、
やっぱり僕にとっては彼女は特別だった。
それにやっぱり脱いでいるのが制服だから良いんだ。
もちろん、じろじろ見てたりしたら
「何見てるの!?」
なんて彼女に嫌われちゃいそうだったから、
こっそりちらちら見ていた。
ちなみに、水着を脱ぐときは、彼女は更衣室に行ってしまった。
それは恥ずかしくてできないらしい。
まぁドジな彼女のことだから着替え中にタオルを落としちゃいそうな
不安もあった。
僕だけが見れるなら嬉しいけれど、
他の男子共に見せてやるわけにはいかない。

そして肝心の大会は予想通り最悪の結果だった。
まずはリレーだ。
男子400メートル自由形。僕がアンカーを押しつけられたやつだ。
案の定、第一泳者から周りにずいぶん差をつけられていた。
周りに差をつけたわけではない。周りよりも遅くて、
ずいぶん差が開いてしまっていた。
第二泳者、第三泳者でもそのさを縮めることはできなかった。
いや、むしろ差はますます広がり、
アンカーの僕が泳ぎ始める頃には100メートルも
差をつけられていた。
それは即ち、僕がスタートする頃には、
周りは既にゴールしていると言うことだ。
周りと競い合って泳ぐはずのプールに一人で飛び込み泳ぐ虚しさ。
そしてようやくゴールしたときには
周囲からの哀れみの拍手…。
だから僕は嫌だったんだ。
にもかかわらず、他の3人は騒いでいた。
とりあえず出場できたことが嬉しかったらしい。
人の気も知らないで暢気な連中だ。
でも、彼女が心配そうに見てくれていたから少し嬉しかった。
もっとも、彼女も適当な言葉が見つからなかったのか、
なかなか声はかけてくれなかったけれどね。
やっと言ってくれた一言が
「直、ひょっとして手を抜いて泳いでたの?」
だった。
僕はその少し後に控えていた、自分の出番のために、
リレーをウォーミングアップに切替えたんだ。
だって明らかに張り切れるような状況じゃなかったんだから。
そしてその後、本当の僕の出番がやって来た。
100メートルの自由形。
今度こそ僕は頑張って泳いだ。
でもタイムの方は相変わらずだった。
最後に出場した大会が一年くらい前。
それから、今年の春まで全く泳いでいなかったことを考えれば、
相変わらずなのはむしろ良い方かも知れない。
そう思いながら、我が水泳部の場所に戻ったときだった。
「直、少し早くなったね」
なんて彼女が言ってくれた。
「え??そうなの??」
と僕は思わず聞き返してしまった。
「うん、0.12秒くらいね」
と言ってくれた。
僕は小数点以下のタイムまでは覚えていなかったのに、
どうやら彼女は覚えてくれていたようだった。
僕はそれが何だか嬉しかった。
早くなったのは嬉しいけれど、それ以上に、
それに彼女が気づいてくれた事の方がもっと嬉しかった。

そして彼女の出番は50メートルの自由形だけ。
僕は自分のタイムすら覚えていないのに、
彼女のタイムまで把握しているはずもなく…
「どうだった?」
としか聞けなかった。
「去年と同じくらい」
と彼女は言っていた。
彼女の出番はこれで全て終わった。
大会は明日もあるけれど、彼女はこの一種目にしか出なかった。

翌日も僕は早起きをした。
今日は出番のない彼女は本来なら行く必要はないのだけれど、
一緒に行くつもりらしい。
おかげで今日もまた僕が重い思いをするはめになってしまった。
出番がないのなら自分で持ってくれてもよさそうなのに、
なんて事は僕の心の奥にしまっておくことにした。

そして、ただ着いて来ただけの彼女はとにかく暇そうだった。
学校に行っていれば2時間で授業が終わって早く帰れるのに、
と不思議に思うくらい暇そうだった。
彼女は日焼け止めを塗ながら、先輩達のススンダ会話に
首を突っ込んでいた。
かと思えば、何時の間にか読書をしていた。
きっと彼女には先輩達のススンダ会話に着いて行けなかったんだろうと
僕は思った。
代わりに何の本を読んでいるのかと思えば、
絵のほとんど入っていない文字のびっしりつまった本だった。
彼女がマンガか参考書以外の本を読んでいる姿とは、
ずいぶん珍しいものが見れた。
なんて思っているうちに本を閉じて鞄に押し込んでいた。
やっぱりマンガじゃないとダメだったのかな、
なんて思いながら僕は彼女を観察していた。
今日の僕の出番はほとんど一番最後だから僕も暇だったんだ。
この長い時間に、彼女とおしゃべりを楽しもう、
なんて予定を密かにたてていたのに、
どうも先輩達がそれを許してくれない雰囲気だった。
ちょっと近付くだけで監視するような視線が集まるんだ。

そんな先輩達も、よほど暇だったのか、何時の間にか居眠りをしていた。
と言うより、むしろ昼寝だった。
シートの上に横になって、鞄を枕にしすっかり眠っていた。
さっきから眠そうにしていた彼女も、
「美奈ちゃんもお昼寝する?」
なんて先輩達に唆されて、一緒になって眠っていた。
いつもの可愛い寝顔の彼女。でも寝相はいつもとちょっと違った。
暑いせいなのか、寝心地が悪いのか、彼女の制服のスカートが
少し捲れ上がっていた。
いつもひざまで覆っている彼女のスカートが、
今日は太股まで露にしていた。
僕はそれが気になって仕方がなかった。
捲れ上がったスカートから覗く彼女のスリムな太股、
それは僕の視線を引き付けるのに十分なものだった。
でも、引き付けるのは僕の視線だけじゃないらしい。
周りには、飢えた獣の様な連中がいるんだから。
そんな連中の視線に、彼女の白くてスベスベで柔らかそうな、
思わずほっぺでスリスリしたくなりそうな
太股が晒されていると思うと、我慢できなかった。
だから、僕は眠っている彼女の太股を隠すように、
お腹の辺りに毛布をかけてあげようとした。
夏の競技とは言え、身体を冷やさないようにと持ってきていた
水泳部の毛布だ。
その一部始終をさっきまで寝ていたはずの先輩が目撃していたんだ。
「上村君優しいね~」
なんて冷やかされてしまった。
「そんなんじゃないですよ!」
と僕は反論しながら、もう一枚の毛布を
とって彼女の頭まですっぽり隠れるようにかけてしまった。
悪戯に見せかけたてれ隠しだった。
でも内心、つい彼女にかけてしまった毛布の事を後悔していた。
じっとしていても暑いくらいなのに、頭まで毛布で覆ってしまった
彼女は大丈夫かな?なんて。
本当はとってあげたかったんだけれど、
先輩達の視線のせいで僕は何もできなかった。

それからしばらくして、
気を紛らわせようと僕が読書を始めた頃だった。
彼女が目を覚ました。でも僕はまだその事に気づいていなかった。
彼女の目覚めをを知ったのは、
頭に丸めた毛布で殴られた衝撃が走ったときだった。
後ろからの不意打ちで、一瞬驚き振り向いた。
もちろんそこには怒った彼女の姿があった。
「もぉバカじゃないの!?こんなに暑いのに
毛布二枚も被せるなんて何の嫌がらせ!?」
なんて怒られてしまった。
良く見ると髪が額に張りつくほど彼女は汗をかいていた。
「でも美奈のパンツが見えそうだったし…」
なんて事は恥ずかしくって言えなかった。
「…ごめん…」
ただそう言うことしかできなかった。
でも、その直後にさっきまで冷やかしてくれていた先輩が、
僕に変わって真実を話してくれた。
それでも一度拗ねてしまった彼女は、なかなかご機嫌を直してくれず、
しばらく口を聞いてくれなかった。
きっとケーキでもあげればコロッとご機嫌になってくれたのかもしれないけれど、
プールサイドにケーキ屋さんはなかった。

そして大会も終わりに近付き、僕の最後の出番がやって来た。
50メートルの自由形だ。
彼女も、その頃には少しご機嫌を直してくれていた。
と言っても、相変わらず口は聞いてくれなかった。
ただ、僕がウォーミングアップのストレッチをしている間、
順番が回って来るのを待っている間、彼女は黙って着いてきてくれていた。
話しかけると顔を背けてあからさまに無視されたけれどね。
それでも、泳ぐ直前まで着ていたジャージを脱いだとき、
それを彼女が受け取ってくれた。
50メートルプールで50メートルの競技をやると、
わざわざスタート地点に脱いだジャージを取にこなければいけない。
でも、彼女のおかげでその必要はなくなった。
「頑張ってね」
なんて彼女の声が聞こえた。
はっと彼女の方を振り返ってみても、彼女はまた顔を背けていた。
でも、彼女の声が聞こえたのは気のせいなんかじゃなかった。
だから僕は嬉しくなった。そして更にやる気が湧いてきた。
彼女のために頑張ろう!なんてやる気だ。
別に僕の記録が良くても彼女には関係のないことかもしれないけれど、
彼女の一言で僕の心に闘志が燃えた。
でも、それくらいで簡単に体力の限界を超えられるほど世の中は甘くはなかった。
それでも、彼女の記憶によると去年より少し速くなったらしい。

それから程なく、閉会式を経て大会は一応終わった。
でも、本当の終わりは家に着くまで。
僕は再び彼女の荷物を持って歩くことになった。
でも幸い帰り電車は空いていて今度は僕も座ることができた。
二日間も早起きをしたせいか、疲れたせいか、
僕は何時の間にか眠ってしまっていた。
それからどれほど寝ていたのかは分からないけれど、
先輩に起こされて目を覚ました。
「もうすぐ駅に着くよ」
と言うことだった。
駅?その言葉を聞いた僕の頭は寝ぼけていた。
寝ぼけ眼で重さを感じていた肩の方を見てみると、
何時の間にか眠っていた彼女が僕にもたれかかっていた。
こんな嬉しいことがあるなら寝なければ良かった、
なんて考えているうちにようやく意識がはっきりしてきた。
そして気がつけばもうすぐ学校の近くの駅に着こうとしていた。
だから少し慌ててしまった。
だって本当は家に近い二駅前で降りるつもりだったのに。
でも寝過ごしてしまったものは仕方がない、
そう思って彼女を起こした。
「直のせいで乗りすごしちゃったでしょ!!どうして直まで寝てるのよ!?」
なんて、戻る電車が来るまでの間、彼女は怒っていた。
彼女よりも先に僕の方が眠ってしまったんだから、
彼女が眠っちゃったことは分からないことだと思うんだけれど、
僕が悪いって彼女が言うならきっとそうなんだろう…。
「ごめん…」
なんて僕は言ってしまった。
それから荷物を持って、彼女の家まで運び届けてあげた。
こうして、僕の高校生最初の大会は終わった。


続く
-------------------------------------------------------------------------
今回もまたぎりぎりの完成です。
って言っても、発行予定よりも既に
1週間遅れちゃってるんですけれどね…。
まぁ別に特別忙しかったとかって言う
理由があるわけじゃないんですけれどね。
ただ、新しく買ったバイクが納車されて、
嬉しくって乗りまくっていて、
メールマガジンを書く時間が
なかったっていうだけで…。
で、雨で乗れなかった合い間に書いて、
何とか完成させることができたっていう
やる気のなさです…。

それにしても…。何だか相変わらずの出来で…。
書いているときは調子よく進んでいた気が
したのですが、読み返してみると、
酷い出来だな~…って感じです。
でも今の私にはこれが限界です。
別に手抜きをしたわけでもないし…。
でも、少しずつ少しずつ仲良くなっていく
二人の様子が描けていればまぁ良いのですが…。

さて、次回のお話は、
嫌がる美奈ちゃんを直君が無理矢理抑え付けて、
美奈ちゃんを泣かせてしまう、
なんて辺りのお話を書く予定です。

そろそろ私的に面白くなって来る頃かもしれません。
私的に面白いというのは、
やっぱり暴走できるところですね。
あぁ~こんな事書いちゃって良いのかな??
ひょっとしたら良い子が読んで
くれているかもしれないのに~…
でもそこにあえて書いてみるのも面白いよね~☆
なんて妄想に胸を膨らませながら
書くのが楽しいんです。
そんな自分で書いたお話ですが、
実は自分で読んでも楽しめるんですよ。
何年後かに、何を書いたのか
忘れちゃった頃に読み返してみると、
なかなか楽しめるんですよ。
同時に、いろいろと手直しを
したくもなっちゃいますけれどね。
でも、書いているときは
面白いかどうかがさっぱり分からなくって…
いつもいつも、またダメダメなお話になっちゃった~
なんて思いながら書き終えています。


[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

WJ系ハリポタ中心の夢小説・CP小説・メールです
週3~4の割合で配信。リク等も受け付けます
裏小説の方が多いです。今すぐ登録してみて下さい
貴女へ、甘い夢をお届けします♪
http://melten.com/osusume/?m=17684&u=21315

★☆★ 恋愛プロフェッショナルの究極の恋愛術指南 ★☆★
恋愛プロが恋に悩むあなたの相談相手に。常時10人の恋人を獲得した実績で
修得した恋愛交渉術・異性を引き付ける術を伝授。恋愛相談有
美女恋愛ライター陣5人のコラム有
http://melten.com/osusume/?m=20366&u=21315
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************


人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 14

またメールマガジンそのまま
掲載だよ。
まぁ相変わらず人気がないしね。
おまけに、
メールマガジンでは発行したのに
ブログの方だけ
更新するの忘れちゃってたしね。
まぁでもとりあえず新しいお話だよ。
*******************************************************
こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回も相変わらずなかなか進展しない二人のお話です。
今回は、前回の続きです。
自分でも何を書きたかったのか良く分からないお話です。

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 14

これが彼女の浸かったお風呂か〜、
なんて僕は湯舟に浸かりながら思っていた。
ここについさっきまで彼女が浸かっていたんだ、
なんて思うと僕は何だか嬉しくなってきた。
飲んじゃおうかな?なんて危険な発想が頭をよぎるほどだった。
僕は二番風呂。彼女が浸かっただけなんだから、
汚いはずがない!なんて、心のどこかで叫んでいる自分がいた。
僕はそんなに彼女のことが好きだったんだ…
なんて自分でも呆れてしまいそうなくらいだ。

結局僕は一口もお風呂のお湯を飲むことなく上がった。
僕はパジャマを着て、彼女の姿を探した。
と言っても、リビングで早速見つけた。
彼女はお風呂から上がってしばらく時間が経ったというのに、
まだ長い長い髪のお手入れをしていた。
「大変そうだね」
なんて僕は言ってみた。
「もう慣れちゃったもん」
と彼女が返してくれた。
「でも、直は楽そうだね」
とも言われた。
床にぺたんと座り込んだ彼女の髪は
もうすこしで床に届きそうなほど長い。
実はこんなに髪が長いのは校則違反のはずだけれど、
彼女は一度も注意を受けないらしい。
ここまで長く伸ばしたきれいな髪を、「切れ」と言うのは
やっぱり先生でも気がひけるのかな?
それに、彼女は超がつくほど真面目で成績優秀な、
所謂優等生だから先生も目をつぶっているのかもしれない。
そして僕は彼女のこの長い髪が好きなんだ。
まぁ彼女のことだから髪を切って短くしても可愛いはずだ、
と僕は思っている。
僕は長い髪の方が好きだけれど、
それ以上に彼女が好きだから、彼女がどんな髪型にしても
きっと気に入っちゃうんだろうな。
なんて思いながら、髪のお手入れをしている彼女の後ろ姿を見つめていた。

ほどなくして、お風呂から上がってきた妹に彼女は連れ去られてしまった。
僕の邪魔をしてくれるとは、まったくもって迷惑な妹だ。
仕方がないから僕は眼鏡と天体望遠鏡を持って庭に出た。
妹の部屋に連れて行かれた彼女の様子を天体望遠鏡で
外から覗いてやろうだなんて考えているわけじゃない。
ただ、夜空の星を眺めたくなっただけなんだ。
眼鏡をかけて空を見上げると、雲一つない星空が広がっていた。
それから僕はしばらくぼーっと星空を眺めていた。
それはずっと見ていても飽きることなく、
吸い込まれそうなほどきれいだった。
だから僕の視線も吸い寄せられていたんだ、首が痛くなるまではね。
僕は少し温かい春の夜風に吹かれながら天体望遠鏡を構えた。
そんなときだった。
玄関が開き、誰かが外に出てきた。
その服装を見て僕は一瞬妹と見間違えた。
と言うのも、妹のパジャマを着ていたからだ。
でも妹にはない長い髪に気づくと、
それが彼女だとすぐに分かった。
急なお泊まりで着替えを持っていなかった彼女は妹に借りたようだった。
彼女が小柄なおかげでサイズに問題はないように見えた。
妹にはない程の胸の膨らみがあるということをのぞいては。
「こんなところで何してるの?」
と言いながら近付いてきた彼女のパジャマ姿を見て僕はそんなことを考えていた。
「天体観測だよ」
と、僕は彼女の胸元からグッと視線を逸らして答えた。
「星、出てるの??」
と彼女は空を見上げて聞いてきた。
僕と同じくらい目が悪いのに眼鏡をかけていない彼女には、
星が全く見えないんだろう。
月だけが浮いている真っ暗な夜空、彼女の目にはそう見えているはずだ。
「眼鏡使う?」
僕は自分のかけていた眼鏡を外して彼女に差し出した。
「うん」
と言って受け取った彼女は、それをかけてもう一度夜空を見上げた。
そしてそのままの姿勢で彼女は言った。
「直の眼鏡、見難いね」
それは僕に合わせて作ったものだから仕方がない。
「でも、いっぱい星が出てるね」
と彼女が言った。
それから、
「ねぇ、これ覗いてみていい?」
と僕に眼鏡を返しながら言った。
「いいよ」
と僕が言うと、彼女は天体望遠鏡を覗き込んだ。
しばらくの間、彼女があまりに静かにじっと覗き込んでいるものだから、
よほど気に入ったのか、あるいは何か面白いものでも見えたのかな、
なんて思った。
でも、どうやらそうじゃなかったらしい。
「直、これ白い点しか見えないよ」
と不思議そうに彼女が言った。
「それでいいんだよ。遠くの星だしね」
と僕が教えてあげると、彼女はこう言った。
「なんだ、つまんないね」
それならもっと面白いものを見せてあげようと思って、
僕は望遠鏡の狙いを月に向けた。
「これはもうちょっと面白いと思うよ」
そう言って、彼女にもう一度覗くように促した。
「本当に??」
と、少し疑ったように言う彼女。
でも、望遠鏡を覗けばその態度は一変した。
「すごいね〜…、こんなによく見えるんだ」
そう言いながら、しばらく望遠鏡から離れなかった。
そうやって腰を屈めて望遠鏡を覗いている彼女の後ろ姿を見つめていると、
ふつふつと邪な思いが湧いてきた。
薄暗い夜の中、パジャマ姿の彼女と二人っきり。
もしも今後ろからぎゅっと彼女を抱きしめたら……きっと怒るんだろうな…
なんて彼女の無防備な後ろ姿を見ながら考えてしまっていた。
もちろん、そんなことを現実に行うことができるわけもなかった。
しばらくすると、
「すごいね」
なんてながら彼女は望遠鏡から離れた。
そして何気なく夜空を見上げていた。
僕も、そんな彼女に寄り添う様に立って上を見上げながらドキドキしていた。
ドキドキしすぎて、意識が遠のく様な感じさえ覚えた。
そんなときにまた僕の口が勝手なことを口走っていたんだ。
「美奈は…キスしたことある…?」
僕はその言葉に自分でもびっくりしていた。
そして同時に後悔もしていた。
「えっ…!?」
と、小さく声を発した彼女ももちろん驚いていた。
それから考えるように少し間を置いて、
「うぅん…」
と彼女が声を漏らし、僕から顔を背けるように俯いてしまった。
それは肯定の意味にも、返答に困った悩みの唸りにも聞こえた。
そして彼女は黙り込んでしまった。
僕には彼女の表情は見えなかったけれど、
彼女の触れられたくない部分に触れてしまった事はすぐに分かった。
と、言うより、僕は前から薄々気づいていたんだ。
それなのに、迂闊にも触れてしまった自分が嫌になった。そして許せなかった。
まさか僕が彼女を傷つけてしまうなんて。
そんな自分の愚かさに呆然としている間も、
彼女はずっと黙り込んでいた。
そしてその沈黙は僕が破った。
「ごめん」
申し訳ないと言う思いを精一杯込めて発した一言だった。
でも、それ以外に言葉が見当たらなかった。
そして僕も黙り込んでしまった。
きっと一瞬の事だったかもしれないけれど、
僕にはものすごく長い沈黙に感じられた。
それから、
「うん」
と小さく彼女が頷いてくれた。
きっと僕がうっかり口を滑べらしたんだって、
少しは分かってくれたんだろう。
それから一呼吸おいて彼女は言った。
「私、先に中入ってるね」
そのとき僕に一瞬見せた表情は、悲しみを堪えているようにさえ思えてしまった。
そして彼女は僕から逃げるように家の中に入っていった。
残ったのはどうしようもない後悔の念だけだった。
それからずいぶんの間、立ち尽くしていた。
そしてその夜は、一度も彼女と顔を合わせることもなく、床に就いた。

なかなか寝つけなかったけれど、何時の間にか眠っていた。
気がつけばすっかり寝坊をしていた。
そしてもう彼女の姿はなかった。
僕が眠っている間に、黙って帰ってしまっていた。
やっぱり怒っているのかな?と思わずにはいられなかった。
謝らなきゃ!
僕はお小遣いを持って家を出た。
どう謝ったらいいのか分からなかったけれど、
とりあえず僕はケーキ屋さんに向かっていた。
彼女に許してもらうには、ケーキが必要だとなぜか思い込んでいたんだ。
ケーキ屋さんにはおいしそうなケーキがたくさん並んでいた。
僕が朝ご飯もお昼ご飯も食べていなかったから、
なおさらそう見えたのかもしれない。
そして僕は悩んだ。どれを買おうか悩んだ。
しばらく前の僕なら、悩みに悩んで一つだけ選び出していたんだろうな。
ケーキという僕の愚行の代償はあまりに高かったんだ。
でも、それは昔のこと。今の僕は違うんだ。
「これとこれください」
なんて、大きくて豪華でおいしそうなケーキを
値札も見ずに言えるようになったんだから。
それと言うのも、最近叔母ちゃんが使いきれないほどの
お小遣いを僕に握らせてくれるおかげなんだ。
でも、その使いきれないはずのお小遣いも、
彼女のためとなるとたちまちなくなってしまう。
僕はずっしりと重い、大きなケーキの箱を
両手に一つづつ持って彼女の家に向かった。

そして彼女の家のチャイムを鳴らした。
返事を待っている間、彼女が怒ってるんじゃないかと僕は不安だった。
いつもなら叔母ちゃんが出迎えてくれるのだけれど、この日は違った。
彼女は姿を表すなり言った。
「何しにきたの?」
大した用がなくても彼女の家を訪れている僕に対して
そんなことを聞くくらいだから、
彼女は怒っているんだろうと僕は思った。
「昨日は変な事聞いちゃってごめんね。
それを謝りたくって…ケーキも持ってきたんだけど…」
と言ってみた。
「ケーキ!?何考えてるの!?直って本当、バカね!!」
そう言い放った彼女の様子は、冗談を言っているようには見えなかった。
だから、その言葉に僕は絶望した。
迂闊にも口を滑べらした一言がこんな事になるなんて…
そう思うと、後悔しても後悔しきれなかった。
夢も希望も失ってぬけがら状態の僕を他所に、彼女は何かを喋り続けていた。
「ケーキ持ってくるんだったらもっと早く持ってきてよ!
もう3時過ぎてるでしょ!?もうたこ焼き作っちゃったのよ!!
たこ焼きにケーキって合わないでしょ!?バカ!!」
なんて彼女の言葉は、僕の耳には届かなかった。
「ごめん」
僕はそれだけを言うと、彼女に背を向け帰ろうとした。
「直、ちょっとまって!」
と、すぐに彼女に呼び止められた。
それから家の中に入れてくれた。
ダイニングルームに通されると、そこにはたこ焼きを頬張っている
彼女の妹の姿があった。どうやら、3時のおやつの最中だったらしい。
「直も食べるでしょ??」
と言うと、彼女は慣れた手つきでたこ焼きを焼き始めた。
僕は彼女の妹に呼ばれるまま、隣に座った。
状況がよく分からない僕は、何も言えず、
小さなたこ焼きプレートの上で
たこ焼きをころころ転がしている彼女をただ見ていた。
彼女の様子は怒っていないどころか、昨日のことなんて
すっかり忘れているようにすら見えた。
そして。
「はい」
と、焼き上がったたこ焼きを僕に差し出してくれた。
もちろんおいしく頂いた。

それから、彼女は早速ケーキを切りながら僕に聞いてきた。
「直はまだ帰らないの??」
だって。
「まだまだ帰らないよ」
と言ってみた。
「じゃあケーキも食べたいの??」
と聞いてきた。
「そうだね」
と答えた。
彼女の考えていることはよく分かった。
僕にひときれたりとも分けたくはないんだって事が。
彼女の小柄な身体のどこにこんな大きなケーキが
収まるのか不思議に思うところだけれど、
彼女はそれを企んでいるようだった。
でも少しは分けてくれたから、彼女の部屋でおいしく頂いた。
僕は嬉しそうにケーキを頬張る彼女を見ながら思った。
ひょっとして、昨日の夜のことは僕が思っているほど
彼女は気にしていなかったのかな?って。
彼女の部屋に置いてあった大量の僕のマンガを見つけて
それは確信に変わった。
昨日の夜まで僕の部屋にあったはずのマンガが、
何時の間にかここにある。
と言うことは、きっと彼女が今朝こっそり僕の部屋に入り込んで、
いつもの様に勝手に持ち帰ったんだろう。
やっぱり、彼女は怒ってなかったんだなって思った。
でも、よかった。こうしてまた彼女と二人っきりでケーキが食べれるんだから。
これはこれで十分幸せだった。
そして、心に誓った。もう二度とバカなことをしないでおこうと。
もっとも、そんな誓いをいつまでも覚えていられるほど僕の頭は良くない。
だってバカなんだから。


続く
-------------------------------------------------------------------------
今回のお話は、結局何が書きたかったのか、
自分でも良く分からないものになってしまいました…。
まぁきっとストーリー展開的には必要なお話なんでしょう。
今回も、なかなかお話を書く気が湧いてこなかった挙げ句、
もうすぐ配信時間の6時になろうとしている、締め切りぎりぎりに
書いてます。眠くって頭がおかしくなりそうです。
そして読み返してみると、
何だかよく分からないお話になってしまいました…。
でもせっかく書いたので、とりあえず配信します。
書く気が起きないのは、きっと私自身飽きちゃったからです…。
なかなか関係の進展しない二人の関係を書き続けることに…。
いい加減に早く、べったりくっつけてしまいたい衝動に
駆られるところですが、
そういう展開はまだしばらく先になりそうな感じです。

とりあえず、やっと卒業研究も終わって、
学校から解放されたので、頑張って書いてみたいと思います。

さて、次回予告です。
次回のお話は部活の大会のお話になりそうな感じです…。
このままではまたやる気が出なさそうです…。
ほんのちょっとくらいエッチな事でも書いて
気をまぎらわせたくなっちゃいます…。
まぁどうなるかは書くときの気分次第ですが、
あまり原作から外れない程度に…。
でも、その次辺りからは、
またやる気が湧いて来るかもしれない展開です、たぶん。

[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

◆======= オリジナル小説メルマガ検索サイト===
====◆
 オリジナル小説メルマガ検索サイト「ニコラス」です
 登録に来てくださいね。サイトがなくても登録OK
 宣伝掲示板・感想掲示板あります
http://melten.com/osusume/?m=19968&u=21315
◆==========================
=====◆

★☆★ 小説!読もう! ★☆★
作成者が見たり聞いたりした小説について書きます
http://melten.com/osusume/?m=19295&u=21315
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************


人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (1)

僕の彼女 13

またメールマガジン転載だよ。
******************************************************************
こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回も相変わらずなかなか進展しない二人のお話です。
今回は、話が長くなりそうなので、
途中で終わって次回に続きます。

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 13

最近僕は少しお金持ちになった。
と、言うのは、
最近叔母ちゃんが僕にお小遣いを握らせてくれるからだ。
叔母ちゃんも昔は僕の母親と同じ一般庶民の育ちだったはずなのに、
今じゃすっかりセレブな奥様をしている。
叔母ちゃんは庶民の金銭感覚を
忘れちゃったんじゃないかってくらいのお小遣いをくれるんだ。
おかげで僕は少しお金持ちになってしまった。
そして僕のお買物の仕方も少し変わってしまった。

馬鹿な僕がいつもの様にまた彼女を傷つけてしまったとき。
いや、その時は傷つけてしまったんだと
僕が思い込んでいただけだった。
それは、彼女が僕の家に泊まった日の事だった。

土曜日。
学校がないからのんびりできる日。
いつもは彼女を迎えに行くために早起きしているけど、
この日はそんな必要もない。
だからのんびり寝て、のんびり起きて、
のんびりお昼を食べる。
僕の家には、休日に朝食が出るという週間はない。
だから早く起きてもお腹が空くだけなんだ。
僕がそんな遅めのお昼を食べていると、叔母ちゃんが家にきた。
彼女も一緒に。
叔母ちゃんは大した用があってきたわけじゃなかった。
ただ僕の母親とおしゃべりをしにきただけだ。
きっと姉妹だと気兼ねなく話せるんだろう。
だから叔母ちゃんもあんなことが言えたのかな。
「お姉ちゃんまた手抜きしてるー!」
なんて、僕の食べてたお昼ご飯を見て叔母ちゃんが言ったんだ。
確かに、僕のお昼は手抜きご飯だったよ。
冷凍食品のとっても簡単なうどんを、
器に移し変えることもなく調理したお鍋のまま食べていたんだから。
「直君が可愛くないの!?」
って叔母ちゃんが怒ってくれていたよ。
僕は怒りを通り越して諦めていたのにね。
そして僕にこうも言ってくれた。
「いつでも家にご飯食べにきてね」
と。
それから、手抜きだとか、忙しいから仕方がないとか、
姉妹でもめてくれたおかげで静かにご飯が食べられなくなってしまった。
だから僕はお鍋を持って自分の部屋に疎開することにしたんだ。
姉妹の騒々しい争いに巻き込まれちゃ嫌だからね。
一人になれて静かなのはいいけど、
静かすぎるところで一人寂しくご飯を食べるのも好きじゃない。
だから、映画を見ることにしたんだ。
最近借りてきた映画を。

それからしばらくして、僕が映画の世界に入り始めた頃。
ドアをノックする音がした。
そして僕が返事をする間もなくドアが開き、
「直、何してるの?」
なんて言いながら彼女が入ってきた。
「映画見てるんだよ」
と僕が答えている間に彼女は
僕のベッドの上に飛び乗っていた。
「面白いの?」
と言いながら彼女は横になった。
その時、僕はパソコンの置いてある机に向かってお昼を食べていた。
なぜって、パソコンのディスプレイがテレビになるからだ。
そんな僕に向かって、彼女が当り前のように文句を言うんだ。
「直、そこ邪魔だよ。見えない」
ってね。
しかたなく僕は後ろにある、あまり使わない勉強机に移動した。
それはパソコンの画面と反対向きになっているから、
ときどき振り向かなきゃいけなくなってしまった。
でも彼女が文句を言うんじゃしかたがない。
そして僕がお昼を食べ終わった頃。
「この映画面白くないね」
と彼女が言った。
僕がこんなにまでして見せてあげていたのに、
彼女は何時の間にか枕元にあったマンガを読みはじめていた。
「映画見てるの??」
彼女の様子を見ればきっと誰だってそう問いたくなるはずだ。
すると彼女は言った。
「だって直のテレビ小さくってよく見えないでしょ?」
と。彼女は目が悪い。だから眼鏡をかけずに
ベッドの位置まで離れたから画面が見えないんだろう。
でも、それなら僕だって疑問が湧いて来る。
「どうせ見えないんだったら僕がわざわざ場所を移動する必要も
なかったんじゃないのかな?」
ってね。
「何!?文句言ってるの!??」
なんて彼女に睨まれてしまった。
「直の部屋のテレビが小さすぎるからいけないんでしょ!?」
なんて怒られてしまった。
確かにそうだ。
彼女の部屋の大きなテレビと比べるまでもなく、僕のは決して大きくはない。
でも、しかたがないんだ。
家は、彼女の家のように地下に巨大なスクリーンとスピーカー郡で
武装したような部屋のない、普通の中流の家庭なんだから。
「この大きさが普通だよ」
と僕は教えてあげた。
「直の家が貧しいだけじゃないの?」
なんて嫌味にも聞こえるような言葉が返ってきた。
でも違うんだ。彼女は本気で言っているんだ。
彼女の家こそが普通であって、
僕の家が貧しいと思い込んでいる子なんだ。
でもそれは今に始まったことじゃない。
昔からそんな子だったから、僕は気にしなかった。
そして、彼女も静かにマンガを読んでいることだし、僕また映画に見入った。

それから僕が映画の世界から戻って来るまで彼女は静かだった。
本当に静かだった。
きっと彼女もマンガの世界に入り込んでいたんだろうと僕は思っていた。
でも、ふとそんな彼女の方を見てみると、
俯せで頬を枕に押しつけ何時の間にか静かに寝入っていた。
なるほど、だから静かだったんだ。
年頃の男の子の部屋で二人っきりなのにぐっすり眠ってしまうとは、
相変わらず無警戒な彼女だった。
それとも、やっぱり僕は警戒が必要な相手じゃないと思っているのかな。
彼女がどういうつもりか知らないけれど、
僕は間違いなく、正常な年頃の男の子なんだ。
心の中には狼だってしっかり住み着いている。
だから、油断しきって眠っている彼女のことが気にならないはずがない。
僕は彼女をじっと見つめながら…、
いや、じろじろと舐めるように視線を這わせながら、
暴れる狼をなだめていた。
「少しくらい身体触ったって、スカートめくったって起きたりしないよ!」
とわめく狼。
「でもそれは…」
と必死で堪える僕。
「じゃあほっぺをつつくくらいならいいんじゃない?」
と囁やかれ、
「それくらいなら…」
なんて思ってしまった僕。
そして僕は彼女の顔を覗き込むように、ベッドの横にしゃがみ込んだ。
すると彼女の無垢で穏やかな寝顔が目に映った。
僕が彼女に対して邪な思いを抱いているだなんて知る由もない彼女は、
ただ幸せそうな可愛い寝顔をしてた。
ずっと目を閉じたまますーすーと静かに寝息をたてる彼女の顔を見つめていると、
僕の心から邪な考えが消えていった。
彼女の顔が再び悲しみの涙で濡れるような事はできないな、
なんて僕は思っていた。
確かにそう思ったんだ。その時、間違いなくそう思っていたんだ。
でも、またどこからか僕に甘い言葉を囁やきかけるやつが現れたんだ。
「ほっぺにチュッてしちゃうくらいいいんじゃない?」
なんて声だった。
「そのくらいじゃ起きたりしないよ」
とも言っていた。
「僕がこんなに彼女のことを想っているのに、無防備に寝ている彼女が悪いんだよ。
ほっぺくらいなら大丈夫だよ」
その言葉で、僕から迷いは消え去った。
「そうだよ、こんなに僕を惑わせる彼女が悪いんだ!」
なんて自分い言い聞かせながら、そっと顔を近づけた。
僕はドキドキしていた。でも心地良いドキドキだった。
彼女のかぐわしい香のせいかもしれない。
僕は、ゆっくりと顔を近づけていた。
今だかつてないほど間近で見る彼女の顔。
そして未知なる彼女のほっぺの感触。
もしも今彼女が目を覚ましてしまったら、という緊張さえ心地よく感じられる。
そのとき、僕がどんなまぬけな顔をして、不様な格好をしていたか
知る術もない。ただ、彼女の白くて軟らかそうなほっぺを一心に目指していた。
そんなときだった。
突然誰かがドアをノックした。
僕は驚いた。心臓が目一杯縮み上がったような気がした。
そして慌てて彼女から離れ、
何事もなかったかのように取り繕い、
平静を装って返事をした。
そのつもりだった。
そしてドアを開けたのは叔母ちゃんだった。
「美奈ちゃんいる?」
と言いながら入ってきた。
「うん…。さっきから寝てる」
と言った僕の様子は、ひょっとしたら少し不自然だったかもしれない。
「ごめんね、直君。美奈ちゃんがベッドとっちゃって」
と、彼女の長い髪を優しく撫でた後、叔母ちゃんが言った。
「うん…。いいよ、別に」
そう答えた僕は、少し後ろめたさを感じていた。
何だかそれを叔母ちゃんに見透かされているような気までした。
「お夕飯の用意しなきゃいけないからもう帰るね。
起きたら美奈ちゃんにも言ってあげてくれる?」
と叔母ちゃんはいつもの調子で言った。
「うん、分かった」
僕がそう言うと、叔母ちゃんは静かにドアを閉め、帰っていった。
さて、これで邪魔されずに彼女に悪戯ができる…
なんて、思ったりもしたけれど、僕はもはやそんな気分じゃなくなっていた。
彼女が傷つけば、あの叔母ちゃんもまた深く悲しむんだろうな。
やっぱり彼女を悲しませるなんて、二度と許せない。
ましてや僕がそんなことをするなんて。
そう思ったら、彼女に指一本触れられなくなってしまった。

それから、日が沈み、外が暗くなった頃、彼女はやっと目を覚ました。
僕がパソコンに向かっていると、後ろから彼女の声が聞こえた。
「直」
と。振り返ってみると相変わらずベッドに横になったままの彼女が、
僕の方を見つめていた。
きっとまだ寝ぼけているんだろうな、僕にはそう思えた。
「今何時?」
と彼女。
「もうすぐ七時だよ」
と僕は部屋の明りをつけながら言った。
彼女が目を覚ましちゃうんじゃないかと思うと、今までつけられなかったんだ。
「ママは?」
そう聞いた彼女の声は、何だか可愛くて甘えたような声だった。
それは今まで僕には聞かせてくれたこともないような声だった。
「帰ったよ。夕飯の準備するって」
僕は叔母ちゃんに言われたことを伝えた。
「ええぇ!?帰っちゃったの??」
と少し驚いた様子の彼女。
彼女を置いて帰ったと言っても、
歩いて5分もかからない距離なんだから何の問題もないはずなんだ。
ただ、既に暗くなっているところを彼女一人で歩いて帰らせるのは
心配だなっていうくらいだ。
「送ってあげるよ」
と僕は言った。
「いい!まだ帰らない!!」
と彼女は少し拗ねた口調で言った。
「でももう外も暗いよ」
と言っても、決して彼女を早く帰したいなんて思っているわけじゃない。
「パパかママが迎えに来るまで帰らない!」
なんて彼女はわがままなことを言い出した。
でも、僕の部屋に居座ってくれるなら大歓迎だけれどね。

そんなことをしているうちに、家の夕飯も準備ができたようだった。
「美奈ちゃんも食べていって」
なんて僕の母親が言った。
始めからそのつもりで準備していたらしく、
今日の夕飯は珍しく手抜きがなかった。と、言うよりも、
むしろ相当な力作だった。
そんなわけで、彼女は家でご飯を食べて行くことになった。
「おいしい?」
なんて僕の母親が聞いていた。
「うん、おいしい」
と答える彼女。
まぁ気合いをいれて作った料理がまずかったら僕が困ってしまう。
そして調子にのった母親が
身の程を弁えていないとしかいいようのない事を口にした。
「ママのと私のどっちがおいしい?」
なんて言い出したんだ。
普段から手間暇かけて料理を楽しんでいるような
叔母ちゃんの料理と、手抜き主婦が一度くらい頑張って作った料理じゃ
勝負になるわけがない。
その勝負の結果は、僕が一口食べたときから既に明らかだったことだ。
でも、わがままな彼女も御世辞というものを心得ていた。
「叔母ちゃんの方がおいしいよ」
なんて言っていた。
そのせいで、単純な母親はご機嫌だった。
それから僕と彼女はいつもの様にのんびりと夕食を食べた。

食べ終わった頃には、午後九時を過ぎていた。
それなのに、叔父さんも叔母ちゃんも迎えに来るどころか、
電話一つなかった。
だから、彼女も拗ねていた。
「パパかママが迎えに来るまで帰らない!」
なんて。
叔母ちゃんに置いて帰られたのが、そんなに気に障ったんだろうか。
そんなときだった。
「じゃあ今日はお泊まりしていく?」
なんて僕の母親が言ったから
「うん」
だなんて彼女もその気になった。
そうして、その日、彼女は家に泊まることになった。
僕は何だか嬉しかった。
彼女と一つ屋根の下、なんて思うと何だか嬉しかった。
別に僕のベッドで一緒に寝たりするわけでもないのにだ。
彼女は僕の妹の部屋で寝ることになった。
それは妹が彼女になついていたからだ。
「お姉ちゃん、一緒に寝よ」
なんてね。
でもやっぱり僕は嬉しかった。
だって彼女と一緒にいられるんだから。


続く
-------------------------------------------------------------------------
と、言うことで、続きは次回に続きます。

そして…私ショックです(>_<)
何だか今回のお話を書く気がなかなか湧いてこなくて…。
きっとなかなか二人進展しないから、
私自身飽きちゃっているのかもしれません。
そのせいで、何だかいつもの調子が出ない気がして…
まぁ気のせいかも知れませんが…。
でも、何だかいつもより更につまらないような気がして…。
って言うか、自分で読み返してみても、
今回のはいつも以上にダメダメだ〜(>_<)
って感じです…。
自己満足で書いているのに満足が得られないんです…。
今回のお話はあんまり気に入っていません…。
なかったことにしたいくらいだけれど、
最近発行していないのでとりあえず発行しちゃいました。
やっぱり最近私疲れてるのかな?
卒業研究が忙しかったせいかな?
その一時的なものだったらいいんだけど〜…。
このままかつての様な自己満足感が得られなくなると
ショックです…。
とりあえず、卒業研究の方は、
トラブルがなければ火曜日に終わるはずなので、
後は卒業式を待つのみです。
最近発行が滞った分も取り戻せるといいんですが…。

ちなみに、今回のお話はまだ6月のお話です…。
もっとどんどん進めたいのですが…なかなか…。
もっと二人の中を進展させたいのですが…
まぁそこは原作に沿って進めていく予定です。
その前に、私が満足できるものを書けるようにならないと…。
とりあえず、今日は疲れちゃった。
目も疲れたし、書いていて嬉しくないって言うのが
一番疲れちゃいました…。
私には休養が必要なのかな??


前回と同じアンケートです、よかったら協力してくださいね。
該当する回答のURLにアクセスするだけですから。
質問、「わがままな女の子は嫌いですか?」

わがまま大歓迎。何でも言うこと聞くよ
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=1
身体的に、経済的に痛くなければ嫌いじゃないよ
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=2
可愛ければ大歓迎
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=3
ほどほどなら構わない
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=4
嫌い、むかつく
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=5
黙ってオレに着いて来い!
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=6
私もわがまま言ってみたい
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=7
美奈ちゃん程度はわがままって言わないでしょ??
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=8
世界中の男共は私の前に平伏すのよ!
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=9
私は尽くすの
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=10


最後に、次回予告です。
次回は、今回のお話の続きです。
一緒に天体観測するとか、
直君が、美奈ちゃんを怒らせちゃったって
思い込んだりする辺りのお話です。

[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

神崎あきらの小説『親殺しのララバイ』
精神的に親から自立していない人間は自虐に走ってしまう
自分の人生をちゃんと生きる為には、精神的な親殺しが必要かもしれない
もうよそう…生き辛さを運命や親のせいにするのは…
http://melten.com/osusume/?m=18879&u=21315

+++++++はっぱ工房+++++++
★みんなの小説投稿受付☆
★発行者独自の小説配信☆
★たまには文章読んでみよう☆
★みんなで作るはっぱ工房☆
★毎週日曜日配信予定☆
+++++++はっぱ工房+++++++
http://melten.com/osusume/?m=20166&u=21315
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************
人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 12

こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回も相変わらずなかなか進展しない二人のお話です。
今回はまた直くんが苛められたり、
一人で悩んだりする感じです。

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 12

やっぱり幼馴染で従弟の僕は、
彼女にとって恋愛対象外なのかな?
なんて思ってしまう時がある。
彼女は僕のことをどう思っているんだろう?
それが気になってしかたがない。
でもきっと友達のような存在じゃないはずだ。
だって、彼女が友達と接しているときの態度と、
僕と接しているときの態度が明らかに違うだから。
心なしか彼女に見下されている感じ…。
でも、その他大勢の男共よりかは少し特別な存在だと
思ってくれているんだろう。
だって、大の男嫌いな彼女が僕のことは避けずに
いてくれるんだから。
でもひょっとしたらそれは僕が男だって事を彼女が
忘れちゃっているだけなのかもしれない。
それとも…僕には心を許していてくれるのかもしれない…
なんて事なら僕はとっても嬉しい。
本当に、彼女にとって僕は僕はどんな存在なんだろう?

僕がいつもの様に彼女の家に向かって歩いていた日。
その時に僕はちょうど一人で歩いている彼女と出会った。
「どこか行くの?」
と聞いてみたら
「ママの代わりにお夕飯のお買物」
と答えてくれた。
この辺りでお夕飯のお買物ができて
歩いて行けるところといえば一つしかない。
そこはもちろん一般庶民も受け入れてくれる普通のお店だ。
彼女も叔母ちゃんと同じ様にそこで
お買物をすませるつもりだったらしい。
「僕もついていって良い?」
なんて聞いてみた。
「荷物持ってくれるんだったら、
連れていってあげてもいいよ」
と予想通りの返事が返ってきた。
別に僕はお夕飯のお買物が趣味だから
彼女に付いて行くんじゃない。
ただ彼女と一緒にいたかっただけなんだ。
そのつもりで彼女の家に向かっていたんだから。
でも、彼女はどういうつもりで
僕の誘いを受けたのかはわからない。
彼女も僕と同じ事を思っていてくれれば嬉しいのだけれど…
実際は僕を都合良くこき使ってくれるつもりなんじゃ
ないかなって気がした。
でも彼女と一緒ならそれでも良かった。

一緒に歩きだすと、
彼女がお夕飯のお買物に行く訳を教えてくれた。
僕も気になっていたんだけれど、
僕が聞く前に勝手に話し出してくれた。
「今日ね、ママが歯医者さんに行いって
親知らず抜いたんだって」
と彼女。
「抜いたの?あれって痛いんじゃないの??」
と僕。
「うん、痛いって言ってた。あんまり痛そうだったからね、
今日は私がお夕飯作ってあげようかな?って思ってね」
ということらしい。
「それでお買物に行くの?」
って言ってみた。
「そう、偉いでしょ??」
と何だか彼女は誇らしげだった。
子供のお使いじゃないんだから、
なんて思いながらも僕は言ってみた。
「うん、お利口さんだね」
それが彼女の気に障ったらしい。
「直私のこと馬鹿にしてるでしょ!?」
なんて言われてしまった。
僕はただ彼女の話に調子を合わせただけなのに…。
「ところで、何で歩いてるの?」
と、さっきからもう一つ気になっていたことを聞いてみた。
「だから、お夕飯のお買物に行くからよ!」
と彼女。
それは僕が聞きたい答えと少し違っていた。
だから彼女にも分かり易いように聞き直した。
「じゃあどうして自転車じゃないの?」
すると彼女が行った。
「だってママはいつも歩いて行くって言ってたから」
だって。
叔母ちゃんってそんなに暇なのかな?
ずいぶんのんびりしたことしてるんだな、
なんて思ってしまった。
「でも美奈は自転車で行っても良かったんじゃないのかな?」
とも思ったけど、
そんな細かいことはこれ以上気にしないことにした。
そんな話をしていても、まだお店は見えてこなかった。
きっとまだ半分くらいだ。
自転車を使わないのが本当に不思議なくらい遠かった。

それからやっとお店に着いた。
時間はかかったけど、のんびり彼女とお話ができたから
嬉しいくらいだった。
でもそれは行きだけの事だと僕はまだ気づいていなかった。
お店に入るなり、彼女は早速僕に仕事を与えてくれた。
「はい」
そう言って彼女は僕に買いもの篭を差し出した。
そして彼女は当然のようにとても軽そうな、
小さなメモを一枚持っているだけだった。
この時、僕は可愛い彼女の後ろ姿を睨みつけるように
見つめていないで、買いものカートの存在に
気づくべきだったんだ。

彼女はこういうところでこんなお買物をするのは
慣れていないんだろう。
どこに何が置いてあるのかわからないようで、
うろうろと歩き回っていた。
どういうわけかお菓子売り場や
デザート売り場に良く迷い込んでいた。
「あれ?ここさっきも通らなかったっけ?」
なんていいながら、彼女は棚の商品に手を伸ばし
そのまま篭に入れる。
「あっちの方じゃないかな?」
と僕が言ってあげているのに、彼女は聞き入れてくれない。
「うるさいわね!黙って着いてきてよ!」
って怒られてしまうんだから。
「迷うのはいいんだけど、
この篭の中の物はいらないんじゃないの?」
なんて思ったけど口にはしなかった。
だって、彼女の逆鱗に触れてしまいそうだったから。
お夕飯に必要そうなものは物は何一つ買っていないはずなのに、
篭には既に半分くらい甘そうなものが詰め込まれていた。
お金足りるのかな??なんて心配になってしまうのは
きっと僕が貧しいからなんだろう。

そうやってお店の中をぐるぐる回っているときだった。
「美奈ちゃん」
と彼女の名前を呼ぶ声がした。
声のした方を見てみるとどこかの学校の制服を着た
見覚えのない女の子が二人立っていた。
僕がその女の子達のことを知らないということは、
その女の子達も僕のことを知らないんだろう。
きっと、僕が彼女の従弟だってことも。
でも、どうやら久しぶりに再会した
彼女の友達らしいということは、
彼女と女の子達の会話からすぐに分かった。
二人の女の子達は再会の喜びもそこそこに、
ちらちらと僕の事が気になっている様子だった。
そしてこの言葉が女の子達の口から出てくるまで
そう時間はかからなかった。
「美奈ちゃんその人彼氏???」
と一人の子が言った。
「ひょっとして今デート中だった??!」
ともう一人の子が言った。
とたんに目ををキラキラと輝かせだしたその子達は、
勝手に答えを決めつけていたに違いない。
そして更に面白い話が聞けると期待しているような目だった。
もちろん、僕と彼女の関係は女の子達が勝手に
想い描いているようなものじゃない。
「そんなんじゃないよ、お夕飯のお買物してるだけだよ」
と彼女は言った。
彼女は、デートどころか彼氏でもない、
というつもりで言ったんだろう。
でも二人は勝手な想像に都合良く解釈してくれたらしい。
きっと、彼氏とお夕飯お買物するのは
もはやデートとは言わない関係だ、
とか思ったんじゃないだろうか。
「ひょっとして同棲してるの!?」
なんて二人して驚いているくらいなんだから。
そして彼女は向きになって否定するんだ。
「だから違うって言ってるでしょ!
何で私が直なんかと同棲しなきゃいけないのよ!?
ただの従弟よ!従弟!!」
ってね。好奇心旺盛な叔母ちゃん達の視線を
集めちゃいそうなくらい大きな声で言うんだ。
「じゃあ何してるの?」
と女の子が聞いた。
「だからお買物だって言ってるでしょ!?」
と彼女。
「二人で?」
とまだ納得のいかない様子の女の子。
「直はただの荷物持ちなの!」
と彼女は徹底的に否定してくれた。
それでもなお、女の子達は不満そうだった。
僕だって彼女と同棲なんてしてみたいけど…
それは僕と女の子達の想像の中でしかありえないことなんだ。
現実の僕達の関係を一言で言い表すなら、
お嬢さまとその荷物持ち、だろう。
力一杯僕達の恋愛関係を否定する彼女を見ていると、
やっぱり僕は恋 愛対象外なんだ…
と落ち込むより他ない。

結局、あの女の子達は
「邪魔しちゃ悪いから帰るね」
と言って僕達の前から達去っていった。
それから、僕はやっぱり彼女の荷物持ちなんだって事を
痛感した。
「直、篭がいっぱいだよ。もう一つとってきて」
と言われたから少し急いで取りに行った。
彼女を待たせちゃ悪いな、なんて急いでいたせいで、
また買いものカートを忘れてしまったんだ。
それなのに彼女は言うんだ。
「直遅いよ!!」
ってね。
そして新しい篭もみるみる重くなっていった。
「あ、これ飲みたい」
そう言って彼女が大きなペットボトルを何本も詰め込むから。
その上、更に、だ。
「直、篭もう一つ!」
なんて言うんだ。
「美奈、もう持てないよ。
もう必要なものは買えたんじゃないの??」
だって、彼女のメモにはどう考えても
こんなにたくさん書き切れるわけがないんだから。
「あのお米が欲しい!」
なんて彼女が言い出さないうちに
僕は早くお店を出たかったんだ。
でも篭が一杯になってくれたおかげで、
彼女はようやくレジに向かってくれた。

彼女は平然と会計をすませた。
そうしてできた、たくさんの買い物袋、
それを全部持つのはもちろん僕の仕事だ。
「直、早く持って」
なんて当然のように言ってくれた彼女は、
嬉しそうに軽い足取りでトコトコと僕の前を歩いていた。
帰ったら何から食べようかな?なんて
事で頭が一杯なんだろう、きっと。
買い物袋が僕の腕ににグイグイ食い込んでいることなど
知る由もない彼女は早く家に帰りたいらしく、
僕に歩調を合わせてくれなかった。
「もぉ!直遅いよ!!」
と可愛い声で悪魔のような言葉を浴びせてくれた。
行きは楽しく二人並んでのんびり歩いてこられたのに、
帰りでこんな仕打が待っているとは思いもしなかった。

ようやく彼女の家に着くと、
叔母ちゃんが出迎えてくれた。
「まぁ、美奈ちゃんこんなに買ったの?」
ってほんのちょっぴり驚いただけだった。
きっとそこら辺の小母ちゃんは、
お使いに行った子供がこんなに買い込んで帰ってきたら、
ヒステリックに騒ぎたてるんだろうな。
でも叔母ちゃんはそんな様子も見せず、
「直くん、ごめんね。重かったでしょ??
お茶でも飲んでいって」
って言ってくれるだけだった。
せっかくだから彼女の部屋に上がり込んで、
重たい思いをして買ってきたおやつを頂くことにした。
「えっ!?直も食べるの!?!」
なんて言われたときは、
彼女に対して今まで抱いたことのない感情が
ほんの少し芽生えてしまった。
そうは言って結局は分けてくれた。
それでもまだまだたくさん残った分は彼女が
一人で全部食べるつもりなんだろう。
だって彼女が自分の部屋の冷蔵庫にしまい始めたんだから。
こんな仕打をされても怒れないのは、
惚れた弱味と言うやつなのかな。
彼女を好きになってしまった僕が悪いんだ…。
でも、あのおやつ食べすぎてブクブク太りだしたら
絶対に嫌いになってやるんだ!!
と、とりあえず心に誓ってみた。
そしてこの日も帰るときには叔母ちゃんが
僕の手をぎゅっと握ってくれた。
「直くん、いつもごめんね」
なんて言って。

こんな調子なわけだから、
僕は決して彼女に嫌われてはいないと思う。
ひょっとしたら、ただの都合の良い便利な存在だと
思われているのかもしれないけれど…。
でもやっぱり彼女は僕のことをそれなりに見てくれているんだ、
なんて思うこともある。
それは、彼女がよく僕のことを話題にしてくれている、
と気づいたときだ。
彼女がしばらく前から発行しているメールマガジンを
こっそり読んでいると、何だか僕の話題が少なくないんだ。
相変わらず、相手が僕だって事を秘密にしたまま続けている
彼女とのメール交換でも、やっぱり僕の話題が少なくない。
もっとも、決して僕のことを褒めてくれているわけじゃない。
何だか僕が見下されていたり、
あまり話して欲しくないことが多い。
彼女がそんなことを自分の友達にまで話してくれちゃうから、
僕が変な目で見られてしまうんだ。

それは教室で彼女に勉強を教えてもらっているときだった。
「上村くんってロリコンだったの??」
なんて突然、笑いながら彼女の友達に言われた。
「えっ!??…何??」
あまりに突然のことで僕には何だかさっぱり分からなかった。
同じクラスにいる彼女の友達の顔と名前は知っていたけれど、
ほとんど口を聞いた事はなかった。
そんな彼女の友達の一人が、
急に僕にそんなことを言い出すんだから、
驚く他なかった。
そしてその子がまた言ってくれた。
「美奈ちゃんってばいつも上村くんのことばっかり喋ってるよ。
上村くんの秘密とか喋りださないうちに
口止めしておいた方がいいんじゃない?」
なんてアドバイスをしてくれた。
「美奈、何喋ったの??」
って彼女に聞かずにはいられなかった。
「何って…。今朝のことだよ」
と彼女。
そう言えば確かに、今朝彼女に
「直ってロリコンなんだね〜」
なんて言われた。
そう言われたけれど、僕はロリコンなんかじゃない!
と思っている。
いつもと同じ様に彼女と学校に向かって自転車に乗っていたら、
たまたま小さな女の子を見かけたんだ。
母親らしき女性と手を繋、何かを待っているようだった。
きっと前の方から走ってきていた幼稚園バスに
乗るところだったんだろう。
僕はその女の子が可愛かったから、少し見とれてしまったんだ。
そのせいで危なく自転車ごと
川に落ちてしまうところだった。
「直、何やってるの?危ないよ」
って彼女が言ってくれたから、僕はつい言ってしまったんだ。
「だってあの子が可愛かったから」
って。
その時だ。
「直ってロリコンなんだね〜」
なんて笑いながら彼女に言われてしまったのは。
別にあの子を見て欲情したわけじゃない。
ただ、小さな子を見て、可愛いと思っただけのこと、
それがたまたま女の子だっただけなんだ。
だから僕はロリコンじゃない!と思う。
まぁ確かに、僕が片想いをしているこの彼女も、
高校生には見えない小柄な体格、
幼い顔立ちではあるけれど。
どうやら彼女はこんな話を自分の友達の前で
してくれたらしい。
だからさっき彼女の友達が僕に
あんなことを言ってくれたんだろう。
「何でそんな話するの!??」
と彼女に聞いた。
「だって面白いんだもん、直」
と全く悪びれる様子のない彼女。
「喋ったのはそれだけ??」
と心配になって聞いてみた。
「うん、今日はそれだけだよ」
と彼女が答えた。
「今日は!??」
と言うことは、他の日にはもっと話していたと
言うことだろう…。
そう言えば確かに、さっき彼女の友達が
いつも僕の話をしているなんて言っていたのを思い出した。
そしてこの出来事も、いつもの様に
彼女のメールマガジンに書かれていた…。
もちろん彼女から悪気は感じられなかった。
そんな話はあまりして欲しくはないけれど、
もし彼女がそれだけ僕に心を寄せて見てくれているなら、
むしろ嬉しい。
「でも、変な事話さないでね」
と彼女にお願いした。
「変な事って??」
と言った彼女の言葉が僕を少しだけ不安にさせてくれた。
彼女に悪気はないと思うのだけれど…。

それにしても、彼女が僕にときめいてくれる時は来るのかな?


続く
-------------------------------------------------------------------------

何だか今回のお話を書くのにずいぶん時間が
かかってしまいました。
いつもなら1,2日くらいで書くのに、
1週間くらい費していた気がします。
それでいて相変わらずの出来具合とは、
自分の未熟さを痛感してしまいます。

そう言えば、明けましておめでとうございます、
なんですね。本当は、お正月中に
発行したかったのですが、完成しなかったので、
結局いつも通りの発行です。

今回は、読者さんが減ってしまいました…。
「めろんぱん」の方の読者さんです。
理由が「文章が分かりづらい」でした。
ショックです、ものすごくショックです。
ベコッ!!って私の心がへこんだ感じです。
私も頑張っているんですけどね…
ほんと、難しいですよね。
でも日々精進して頑張っているので
温かく見守ってやってください。
そんなわけで、今回から一切の妥協、手抜きを
排除すると心に誓ってみました。
疲れていると「ま、いいか」なんて思ってしまうのですが、
今回からはそれを無くしていこうと頑張っています。
まぁそれで良くなったかどうかは分かりませんが…。

そう言えば、2006年になって、私もこんな感じの
お話を書きはじめて6年くらい経つんだな〜なんて
思ってしまいました。
ちょうど2000年1月1日に私がWEBサイトを初めて
公開したんですよ。確かあの頃は15才。若かったな〜…。
まぁその時のサイトのコンテンツがこんな感じの
お話だったんですよ。サイトに載せるコンテンツがなくって
何がいいかな〜?って悩んでいたら、
これなら私にもできるかな?なんて事で
お話を書きはじめたんですよ。
それから6年。私これでもあのころより、
文章書くのはずいぶんましになったと思います。
でもあの頃の私も、お年頃だったもので、
所謂18禁のお話を書いてみたいな〜なんて思ってたんですよ。
思っていただけで、私には書けなかったんですけれどね。
まぁそんな感じのことはブログにも書いたんですけどね。
http://moox.cocolog-nifty.com/moo/2006/01/18_c84e.html

でも、このF日記を書き続けて行くと、
いずれそんなシーンに遭遇してしまうんですよ。
原作のF日記を読まれた方はご存知かも知れませんが、
2,3年の頃にはなかなかエッチなことを
してくれちゃってるみたいなんですよ。
このまま今の調子で書き続けると、
そのシーンをどう書こうかな??なんてちょっと考えています。
私はエッチのシーンを事細かに書く様なのは好きじゃないし、
書けないかも知れないし、何より私が恥ずかしいし…。
それに、以前行ったアンケートによると
18才未満の方も読んでくれているようなので、
やっぱり18禁にはしたくないんです。
じゃあその辺をどう描こうかな〜?と
今考えているところです。
ちなみに、原作は「メルマガ天国」のマガジンID9422です。
気になる方はどうぞ。全部そろっていないようですが。

そんなことを考えつつ、
インターネットで情報収集をしていたら、
私とっても驚いてしまいました。
最近の子はすすんでるんだな〜って…。
中学生で初体験は普通なの!?
早い子は小学生で!?小学生で妊娠、出産した友達が云々って…
ひょっとして私はものすごく遅れてるの!?
ってかなりショックを受けてしまいました…。
最近の子はそんなにすすんでるんですか??
高校生で初体験は遅いですか??
私は高校生なら早い方かな?なんて思っていたんですが…。
まぁでも私は世間から目を背け、自分の世界に籠って
ひたすら妄想を続けるだけですから。
周りがどうだって関係ないんですよ。

今、Canvas2読んでいるところです。
やっぱり面白いです。
でも浩樹君があまりかっこよくないな〜
と言うのが少し不満です。
カードキャプターさくらの桃矢お兄ちゃんは
あんなにかっこよかったのにな〜
なんて思いながら読んでしまっています。
とりあえず、ネット通販で2巻を注文しました〜☆
ちなみに、私は「お兄ちゃん」×「妹(みたいな子)」
って言うのが好きです。昔書いてました。
また機会があればそのうちにでもと思っています。

そして、またアンケートです、協力してくださいね。
該当する回答のURLにアクセスするだけですから。
質問、「わがままな女の子は嫌いですか?」

わがまま大歓迎。何でも言うこと聞くよ
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=1
身体的に、経済的に痛くなければ嫌いじゃないよ
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=2
可愛ければ大歓迎
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=3
ほどほどなら構わない
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=4
嫌い、むかつく
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=5
黙ってオレに着いて来い!
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=6
私もわがまま言ってみたい
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=7
美奈ちゃん程度はわがままって言わないでしょ??
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=8
世界中の男共は私の前に平伏すのよ!
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=9
私は尽くすの
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=13&answer=10


最後に、次回予告です。
次回は美奈ちゃんが直君の家にお泊まりする辺りを
予定しています。
まぁ相変わらず直君は何もしませんが…。

[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

======================================================

 ■===女度UP計画===■

 あたりまえのことだけど、見逃していることが多いと思います
 そのあたりまえのことを、意識して実践するだけで
 ステキになれることって絶対多いと思う!
 そんなあたりまえのことや、私が感じたこと
 いろんなことをお話していこうと思っています
 登録はこちら http://melten.com/osusume/?m=13330&u=21315

===========================================================

★☆★ 妄想武勇伝 ★☆★
妄想武勇伝のメルマガです。現在、武士道をテーマにした小説
「銑鉄の竜騎兵」をお送りしています
小説の書き方なども説明しているのでご一読ください
http://melten.com/osusume/?m=21197&u=21315
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************


人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 11

相変わらずメールマガジンそのまま掲載。
本当はもっと早くブログにも
書くつもりだったんだけど、
夜遅くって言うか、
朝早くになっちゃったから、
メールマガジンだけ発行して
寝ちゃったんだよ。
お外が明るくなってくると
なかなか寝つけないしね。
**************************************

こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回も相変わらずなかなか進展しない二人のお話です。
やっと二人でお茶したってくらいの。

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 11

デートの費用は男の子が払う、
僕はその現実に何の疑いも抱く事はなかった。
例え、僕が貧しいお小遣い生活をしている高校生でも、
例え、彼女がどんなにお金持のお嬢さまでも、
その現実は常に不変だった。
でもしかたなかったんだ。
「何で私が直なんかとデートしてあげなきゃいけないのよ!?」
なんて彼女に言われちゃいそうな気がしたから。
でもしかたなかったんだ。
そんな彼女のことを好きになっちゃったんだから。

その日も僕はいつもの様に部活に行った。
珍しく、あまり見たことのない人達まできていた。
何事かと思えば、大会に出場する種目を
決めると言うことだった。
どういうわけか、いつも部活にきては
バシャバシャ遊んでいる程度の事しかしていない
一年男子共が、リレーに出たいと言い出した。
そしてすぐに決まってしまった。
僕をアンカーに加えてだ。
アンカー、それはとても嫌なポジションなんだ。
プレッシャーがどうとかって言うのは、
気合い十分の速く泳げるアスリート集団の中にいて
初めて感じられるものだ。
アンカー、それは
他のチームがゴールし終えた静かなプールを
一人寂しく泳ぐ使命を与えられた者を意味する。
つまり、断トツびりで後ろから二位のチームとも
大きな差をつけられているって事なんだ。
僕はそれが嫌だった。
そんな目に逢うくらいなら一番最初に泳ぎたい、
という希望も聞き入れられることなく
僕はアンカーに決まってしまったんだ。
それならばせめて早速練習を!
と思っても、案の定連中は水着を持ってきていないと
言い残し、帰ってしまった。
きっと朝から強く雨が降っていたせいだろう。
それでよくもリレーに出ると言えたものだ。

そして、プールに残ったのは四人だけだった。
はぁ〜っと大きな溜め息がもれそうな僕の心境に、
彼女は気づいてくれることもなく、
例の女の子と一緒に更衣室に行ってしまった。
「大丈夫だよ、そんなに遅くならないように頑張るから」
と優しく僕に声を書けてくれたのは、
一緒にリレーに出ることになった先輩だけだった。
「センパイ…」
でも先輩だってそんなに速くないじゃないですかぁ!?
なんて事は、さすがに僕の口も言わなかった。

それから、一緒に更衣室に着替えに行って練習を始めた。
とは言っても、練習メーニューなんておおげさなものはないから
それぞれ勝手に泳ぐだけだ。
リレーとは言っても、四人が同じコース内で
連続して100mずつ自由形で泳ぐだけのことなんだから。
先輩は一年男子共と違って、黙々と練習をしていた。
しばらくすると、寒くなってきて僕が震えていると
先輩はすぐに気づいてくれた。
「無理しなくても先にあがっていいよ」
だって。
やっぱり良い先輩だ。
さっきからキャッキャとはしゃぎまわってる彼女とは
ずいぶん違うな、なんて思っちゃうくらいにだ。

それから僕は着替えてまたプールサイドに戻った。
「先に帰ってもいいよ」
と先輩は言ってくれたけど、僕は帰りたくなかった。
だってまだ彼女がいるんだから。
ほどなくして先輩も練習を終えて帰ってしまった。
いつもならこれから彼女と二人っきりの時間。
と言っても、臆病な彼女が一人で練習しているのを
プールサイドから見守っているだけの事だ。
でも今日は例の女の子がいるから僕が待っている必要は
なかったのかもしれない。
けれど僕は彼女を待っていたかったんだ。
いつもなら、時折彼女の方から声をかけてくれる。
ひょっとしたら僕が逃げ帰っていないか
確かめるためなのかもしれないけれど。
でも今日の彼女は僕のことなんて
全く気にしてくれる様子もなく、
例の女の子と一緒にはしゃいでいた。
おかげで僕はちょっと退屈だった。
だから鞄から本を取り出して読書をすることにした。
こんなこともあろうかと思って買っておいたんだ。
叔父さんが面白いよって言ってくれた本、
「フェルマーの最終定理」。
でもそれを読みはじめてすぐに重大な事実に気づいたんだ。
叔父さんと僕の頭じゃ構造が絶望的に違うと言うことに。
早い話、僕にはよく理解できなくってつまらなかった。

ふと気がつけば、いつのまにかぼーっと
彼女を見つめていた。
こんなに寒いのに元気だな〜なんて思いながら。
そんな僕の視線に気づいたのか、
例の女の子の視線が僕の方に飛んできた。
僕は慌てて視線を逸らして本を読んでいるふりなんて
してしまった。
気づかれちゃったかな?彼女に変な事言っちゃうのかな??
なんて僕が心配しているときだった。
「なお〜、ちょっと来て!」
と彼女に呼ばれた。
ちょっとドキドキしながら行ってみると、
なんて事はなかった。
「亜里砂ちゃんが泳ぐからちょっと見てあげて」
と言われただけだった。
もちろん断る理由もなく、
泳ぎだしたその子の姿を見ていた。
「どう?」
なんて聞かれたけれど、
彼女も一緒に見ていたんだから
きっと同じ事を思っていたはずだ。
「どうもこうも、溺れてるんじゃないの?
一応前には進んでるみたいだけど」
と素直な感想を口にした。
「直ひどい!亜里砂ちゃんも頑張ってるんだよ!」
なんて怒られてしまった。

それから、その子が戻って来るまでずいぶん待たされた。
たった50m泳いだはずなのに、その子は5kmくらい
泳ぎきった様に疲れていた。
そして
「どうだった?」
と聞いてきた。
その問に僕よりも早く彼女が答えた。
「溺れてるみたいにヘタクソだから、
基礎からしっかり練習した方がいい。
って直が言ってた」
だって。
おかげで、
「上村くん酷い!」
なんて、その子に睨むような視線を浴びせられた気がする。
まぁ本当にそんな感じのことを言ってしまったから、
否定もできなかったけれど。
でもその子が溺れかけてくれたおかげで、
彼女と話すきっかけができたんだ。

「お腹減った〜」
彼女がそう言ったから今日の練習は終わった。
それから更衣室で二人が着替えているのを待っていた。
先に出てきたのは例の亜里砂ちゃんだった。
「これから三人で喫茶店んに行かない?
上村くんがおごってくれるなら
美奈ちゃんが行きたいって言ってたんだけど」
って、突然誘われた。
僕のおごり!?なんて思ったけど、
女の子二人と一緒に喫茶店だなんてチャンスは
二度と僕には訪れないだろう!って言う思いの方が強かった。
「四千円までだったら…」
なんて情けない返事をしてしまった。
幸か不幸か、今月の僕のお小遣い全額を
たまたま持ち合わせていた。

「あ、ごめん。やっぱり今日は用事があるから無理」
三人で学校を出て、しばらく走っていると
あの子が突然言い出した。
「え〜?お腹減ったのに〜!行けないの!?」
と彼女がすかさず反応した。
「ごめんね。でも私がいなくったって
二人で行ってくればいいじゃない」
なんて嬉しい提案をしてくれた。
でも彼女の反応はあまり嬉しいものじゃなかった…。
「え〜?直と二人だけで〜??」
なんてあからさまに不満そうだった。
「でも上村くんがおごってくれるって言ってたよ」
とあの子が言ってくれた。
「ん〜…。じゃあ直と一緒に行ってあげるよ」
そう彼女が僕に言った。
神様の意思か悪魔の仕業か、
おかげで彼女と二人で喫茶店に行くことができた。
僕のおごりで…。
ほどなく、僕と彼女を二人っきりにしてくれたあの子は
さって行った。

「でも喫茶店ってどこにあるの?」
なんて僕が行ったせいで、
彼女のお気に入りの喫茶店に行くことになった。
僕は喫茶店なんて滅多に行かないから良く知らなかった。
だから、彼女が叔父さんと良く行くって言う喫茶店に決まった。
「パパと良く行くところだよ」
なんて彼女が言ったときに気づくべきだったんだ。
僕と叔父さんの決定的な違いに。
いや、メニューを開いた段階で正直に白状していれば
まだ後戻りはできたかもしれない。
「お金、そんなに持ってないんだけど…」
って。
でも結局言えなかった。

「私はチョコラティーヌと、チョコムースタルトと、
フルーツムースと、カフェオレ」
彼女が店員のお姉さんに告げたその言葉を
思わずメニューの中から探してしまった。
きっと彼女は僕と叔父さんの決定的な違いに
気づいてなかったのかもしれない。
あるいは、僕が貧しい高校生だって事に
気づいていないのかもしれない。
それとも、やっぱり彼女はお嬢さまだって事なのかもしれない。
「えっと…、じゃあ僕はお水を…」
なんて僕の口が勇気ある発言をしてくれた。
「そんな目で僕を見ないで」
って言いたくなっちゃうような視線を、
店員のお姉さんは僕に向けていたかもしれない。
「もぉ、直何つまんない冗談言ってるの!?」
と彼女に怒られてしまった。
そして、
「じゃあ直のは、ナポレオンって言うのと、
ミルクティでお願いします」
って代わりにお姉さんに言ってくれちゃったんだ。
「ナポレオンってどんなケーキかな?」
なんて嬉しそうに彼女が話題を振ってくれた。
「よくわからないけど、高いんじゃないの??
ナポレオンって言うくらいだし」
僕はそんなことしか言えなかった。
「えぇ〜?でもそんなに高そうなケーキはなかったと思うよ」
と彼女が言っていた。
そんなことを言われたから、僕は気になったんだ。
「じゃあ高いケーキって言うのはいくらくらいするの??」
ってね。
「私自分でケーキ買わないからわからない」
なんて言葉が返ってきてしまった。

そうしているうちにケーキ四つと、
カフェオレとミルクティーが運ばれてきた。
わざわざお姉さんが目の前で紅茶をいれてくれるサービスが、
さらに僕の不安を掻き立ててくれた。
でも、せっかくだからおいしい思いをしながら
彼女と二人っきりの時間を楽しもう、
なんて覚悟を決めたときだった。
「このカフェオレ甘くない!!」
と彼女が不満そうな声をあげた。
「直、飲んで!」
と言いながらそれを僕に渡してくれた。
一瞬とはいえさっき彼女が口をつけたストローが刺さったまま。
「いいの?飲んでも?」
と一応彼女に確認してみた。
「いいよ」
これは所謂、間接キス…
なんてドキドキしている僕を他所に、
彼女は全く気にする様子もなくメニューを眺めていた。
そう、僕は彼女が口にしたカフェオレに
気を取られすぎていたんだ。
僕が彼女との初めての間接キスを済ませている間に、
彼女の前にはレモンティーが追加されていた。
カフェオレおいしい…
それだけが僕を慰めてくれるようだった。

何もかもを忘れて、
おいしく彼女とケーキを楽しむ一時は終わりを向かえた。
そしてどうしようもない現実に引き戻された。
「漱石さん、短い間だったけどとても名残惜しいよ」
と別れを惜しむ僕の気持ちにお姉さんは全く気づくこともなく、
容赦なくレジの中に押し込んだ。
代わりに、チャリンと軽い音が戻ってきた。

「直、おいしかったでしょ?」
と帰り道に彼女が話しかけてくれた。
「うん…」
落ち込んでいる僕には、そう答えるのが精一杯だった。
でも彼女はそんなことに気づいてくれることもなかった。
「また一緒に行こうね」
そう言って僕に微笑みかけてくれた。
嬉しそうな顔でそう誘ってくれる彼女を見ると、
こんな状況でも僕は幸せになれた。

幸せとは…斯くも高いものなのか…と
人生の厳しさを思い知った日だった。
彼女と二人で過ごした初間接キス付きの幸せな一時で、
僕は今月のお小遣いを失った。
残ったのは彼女の笑顔と、
来月までの絶望に近い不安だけだった。
でもまた一緒に行けるのかな…僕に…。

でも、しかし、翌日の朝、僕は絶望のどん底で天使様を見た。
天使様は温かい朝ご飯と共に僕の目の前に降り立ったんだ。
「直くん、昨日は美奈ちゃんを喫茶店に
連れていってくれたんだって?」
と僕に聞いてきた。
僕はいつもの様にご飯を食べながら
「うん」と頷くだけだった。
「ごめんね。美奈ちゃんお金全然払わなかったでしょ??」
と言われた。
「うん」
と僕ははっきり答えた。
「でも、おごるって言っちゃったし…」
と僕が言う前に、
叔母ちゃんの温かい手が僕に何かを握らせてくれた。
「ごめんね、直くん」
と言いながら。
僕はそっと手を開いてみた。
そこには今まで見たことのないものがあった。
いや、見たことはあるけれど、
こんなにいっぱい諭吉さんがいるのを見たことはなかった。
「でも、こんなに…」
そう、こんなに高いお茶代があるわけがない、
なんて思うのは僕がただ貧しいだけなのかな?
と思わずにはいられなかった。
「また美奈ちゃんがわがまま言うかもしれないから」
そう言って叔母ちゃんは再び僕の手をぎゅっと握った。
天使様に勇気という名の諭吉さんを与えてもらったおかげで、
また彼女を喫茶店に誘おうかな?
なんて思いが湧いてきた。
今度はもっと楽しんでね。

そして僕は気づいた。
わがままな女の子はこうして生まれるのか…と。
でも、そこが可愛いんだよ、
なんて思ってる僕は悪魔にでも洗脳されたのかな?
それでもやっぱり僕は彼女が好きなんだ。

続く
-------------------------------------------------------------------------
12月25日午前5時20分。
やっと書き終わって、今ここを書いているところです。
疲れた。本当はもっと時間をかけて書きたかったのに、
また今回もぎりぎりになってしまいました。
って言うか、また発行が遅れているわけですが。
と言うのも卒業研究が大変だからです。
やっと実験が終わって、
後は論文にまとめるだけです。
実験で5ページ…書けるかな?
まぁ私は文章を書くのが嫌いじゃないので、
書くネタさえあれば1万字の論文も、
大した事はないんですけどね。
でも、論文書くのはものすごくつまらないです。
とりあえず、明日はこそ論文書き上げないと…。
でも卒業研究が忙しいおかげで最近3日間くらい
家から一歩も出てません。
玄関に近付くこともなく、
ベランダに出ることすらなく…。
おひさまが恋しいな…。

それが終わったら通販で買ったばかりの本読もっと。
最近私はCanvas2にはまってるんですよ。
だからマンガと小説を買ってしまったんです。
読むのが楽しみです。
所謂美少女ものと言われるジャンルかもしれませんが、
ストーリー的には結構好きなんですよ。
深夜にアニメで放送をしているのを見て
すっかり気に入ってしまいました。
気が向けば次回に感想とかでも。

クリスマスの特別編のお話でも書こうかな?
なんてクリスマスケーキを食べてるときに
思い付いちゃいました。
もっと早く思い付いていればクリスマスに間に合ったのに…。
しかたがないから来年までに書こうかな?
ネタは思い付いちゃったのに…。

「小説は好きですか?」
のアンケート結果です。
やっぱり私よりもいっぱい読んでる人が多いですね。
さとっっぺさん、コメントありがとうございました。
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/result.rb?user=moo&no=14

さて、次回予告ですが、
「同棲してるの!?」
「直ってロリコンなの??」
「美奈ちゃんっていっつも上村くんの話するね〜」
「ウェディングドレスのコスプレ!?」
辺りをキーワードに書いてみるかもしれません。
そのときの気分で書かなかったりするかもしれませんが。

[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
■□■不協和音\x{2014}ゆいの戯言■□■
小説化志望で精神病で、ロックとお酒が好きな二十歳の性格破綻娘ゆい
赤裸々すぎる日常やら、愚にもつかない妄想やら
つまるところは矛盾思考の戯言です
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
http://melten.com/osusume/?m=19820&u=21315

フリーソフトでパソコンライフをエンジョイしていただくメルマガで
す。市販ソフトは高くてなかなか買えないあなたに、フリーソフトと
使い方をお届けします。フリーソフトの宝庫ですよ! パソコン情報も
満載です!
  ↓ 登録はこちらから ↓
http://melten.com/osusume/?m=17064&u=21315
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************
人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 10

今回もメールマガジン抜粋だよ。
*****************************************************************

こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回も相変わらずなかなか進展しない二人のお話です。
そして、前回の次回予告と違っちゃっています。

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 10

僕は片想い中の彼女に、
相変わらず素直に気持ちを伝えられないでいる。
でも彼女への想いは募るばかり。
そんな僕にできることは、あの手この手で
彼女の気を引こうとするだけ。
と言っても、意気地の無い僕にはそれすらままならず、
つまらない悪戯をしてかえって逆効果になるだけだ。
そしてつまらない見栄まで張ってしまうんだ。

そんな僕は、彼女に呼び出されたら
喜んですぐに駆けつける。
せっかく愛しい彼女が僕を呼んでくれるんだから。
あの日もそうやって呼び出されたんだ。
「直、今から家にきて」
と電話の向こうの彼女が言った。
「どうして?」
と僕は取り合えず用件を聞いてみた。
「どうせ直暇なんでしょ!?いいから早くきてよ!!」
彼女は僕に有無を言わせてくれるつもりはないらしい。
彼女に暇人だって思われるのは嬉しくないけど、
もちろん僕はすぐに彼女の家に向かった。

着いてみると彼女は庭にしゃがみ込んで
趣味の庭弄りをしているところだった。
「何してるの?」
と近付いてみると、何かの苗を植え変えているところだった。
「夕顔だよ」
と言って、小さな苗を一つ渡してくれた。
「これを手伝うの?」
と聞いてみた。
「ここに植えて」
と彼女が指さした。
僕は言われるままにスコップで小さな穴を掘って、
植え変えた。彼女の手伝いをするのは
始めてじゃないから、僕も慣れている。
ただ、一つを植え変えるのは一瞬でも、
植え変えなければならない苗が
たくさんある。
「何でこんなにいっぱい植えるの??お花屋さんでも始めるの?」
って聞いちゃいたくなるくらいにだ。
「違うよ、種買ったら袋の中にこんなにいっぱい入ってたんだもん」
と彼女が答えた。
「そう言えば、朝顔は植えてないの?」
と聞いてみた。
僕が中学生の頃に彼女に朝顔をあげて以来、
彼女は種をとって毎年育てていたんだ。
「それはこの間やったよ。でも朝顔は私が起きた頃には
しおれちゃってるでしょ?ホント、直のくれた朝顔はだらしないわね。
私が起きるまで咲いてればいいのに」
なんて言っていた。

やっと全部植え変えが終わって顔をあげると、
庭の真中辺りに立っている叔母ちゃんの姿が目に入ってきた。
輝く太陽の下、片手で頭の麦ワラ帽子を押さえ、
風になびかせた真っ白なワンピースを身にまとった叔母ちゃんは
眩しかった。正に絵になる光景といったところだ。
それは僕の心がほんの少しだけドキッとしてしまうほどだった。
きっとそのへんの小母ちゃんが
やっと手に入れた憧れのマイホームの、箱庭みたいな狭い庭で
プチセレブ気分を真似してみても、
何ともし難い現実を痛感するだけだろう。
一方の、正にセレブな美人奥さま満喫中といった叔母ちゃんの視線の先に、
お屋敷に庭師みたいに働いている叔父さんの姿を見つけた。
よく見てみると、庭を囲んでいる木に何かを吹き付けているようだった。
「おいたんは何してるの?」
と、彼女に聞いてみた。
「毛虫退治だよ」
と水道の前にしゃがみ込んで何かをしている彼女が答えてくれた。
「いるの、毛虫?」
と聞いた。
「毎年いっぱい出てくるんだよ」
と、彼女。
そりゃまぁ、あれだけ木があればいっぱい出るかもしれないけど、
なんて僕は思った。
「で、お姉ちゃんは何してるの??」
と僕が聞いたお姉ちゃんとは、
まだ30才位だという叔母ちゃんのことだ。
「ママは、パパがさぼっちゃわないように見張ってるんじゃないの?」
と言っていた。
あの優しそうな視線にはそんな意味が込められているの?
と叔母ちゃんの方を見てみた。
そんなときに、
「直準備できたよ」
と彼女に言われた。
「え、何?」
と振り返ってみると、大きなタンクを備えた噴霧器が準備されていた。
「何これ??何するの??」
と一応聞いてみた。
「毛虫退治だよ」
その答えは予想通りだった。
叔父さん一人じゃこんなに広い庭中の木で毛虫退治は無理だよね?
と疑問に思ったときからこうなることはわかっていた。
でも、こんな巨大なタンクを運ばされるとは予想外だった。
十リットルくらいは入りそうなタンクに、液体が満タンに入っていた。
「直はこれを持ってね」
と言う彼女は見るからに軽そうな、小さな霧吹を両手で抱えていた。
僕はこの巨大な霧吹が持てないわけじゃない。
実際にいい格好をしようだなんて思い、持ち上げてみた。
すると
「やっぱり直はすごいね」
と嬉しい言葉を彼女に浴びせられた。
しかし、細かい霧状になって少しずつ吹き出すタンクの水は
なかなか減らないどころか、
徐々にずっしりと重くなってくる感じさえした。
そんな僕の苦労を他所に、
彼女はとても軽そうに小さな霧吹を振り回していた。
そのときの僕は、そこから水が一滴も吹き出していないことに気づかなかった。
その上、更に
「直、もっと上の方までかけないと毛虫が湧いちゃうでしょ!」
と怒られた。
そして、それがやっと終わった頃。
疲れ果てた叔父さんと僕を他所に、
叔母ちゃんと彼女は嬉しそうにしていた。
だって、叔母ちゃんは庭の真中で絵になってただけだし、
彼女の霧吹は始めから空っぽだったんだから。

ふと彼女の方を見ると、襟元に何かが付いていることに気づいた。
じっと見ていると、それは何やら微かに不吉な動きをしていた。
「美奈、ちょっときて」
と、彼女を呼んで、おそるおそるそれを見てみた。
そしてすぐにわかった。
それは頭を持ち上げうねうねと気味の悪い動きをする、
僕の大嫌いな芋虫だった。一瞬にして身の毛がよだってしまった。
「どうしたの??」
と未だに気づいていない彼女が、硬直した僕をみて不思議そうに言った。
「美奈…芋虫が付いてる」
僕がそう言ったとたん、彼女の顔が恐怖にひきつった。
「えぇっ!?どこどこ!?どこに付いてるの??」
と、彼女は必死で自分の身体を見回した。
「あんまり動くと潰しちゃうよ」
と僕が言うと、彼女の身体は一瞬にしてこわばった。
「ここ、襟のところ」
と僕が指さすと彼女は思いっきり顔を背け目をぎゅっと閉じた。
「直取って」
そう言った彼女の声は今にも泣きだしそうだった。
でも、しかし、だ。
僕だってこんな気持ち悪い生き物は大の苦手なんだ。
例え大好きな彼女を助けるためとは言え、すぐに身体は動かなかった。
そしてきょろきょろと辺りを見回して、
棒を探した。もちろん素手で触らなくてもいいようにするためだ。
もっとも、棒で触っても、芋虫のうにゅっとした感触は
しっかりと棒を伝わってきてしまう。
でも、こんなときに限って何も見つからなかった。
「直、お願い早くして!」
彼女の悲痛な叫びを聞いた僕は覚悟を決めた。
僕は男になって彼女を助ける!と。
おそるおそる指を近付け、できるだけ触らないように
細心の注意を払いながら、芋虫を弾いた。
その作業は正に壮絶を極めた!
ようやくそれを成し遂げ、ほっとしつつ
あれに触れたときの想像を絶する気持ち悪い感触の余韻に浸っているとき、
僕の口は思わず声を発してしまった。
「あっ!」
と。
「どうしたの??」
と不安そうに聞く彼女の目には涙まで浮かんでいた。
「服の中に入っちゃった」
僕がそう言うと、彼女は悲鳴のような泣き声をあげて、
慌てて服を脱ぎ始めた。
ここが家の外の、僕の目の前だと言うことも忘れて。
僕も慌てて彼女の手を押さえてやめさせた。
「ごめん、嘘、もう取れたよ」
そう言うと、彼女の身体から力が抜け、暴れなくなった。
僕は、彼女の顔にはっきりと残る涙の後を見て、
ちょっと悪い事しちゃったかなと、反省せずにはいられなかった。
そんなときだった。
突然後頭部に激しい衝撃が走った。
まるで巨大な空のペットボトルで殴られたような感じだった。
あまり痛くはなかったけど、すごい衝撃だった。
振り返ると、さっきまで僕が使っていた、
巨大な噴霧器を手にした彼女が立っていた。
そうか、僕はこれに殴られたのか、とすぐにわかった。
凶器には水が幾らか残っているところから察するに、
あの遠心力が弱い彼女の力を増幅させてしまうんだろう。
彼女が更に殴ろうとふりかぶったところに、
叔父さんが助けにきてくれた。
そしてどういうわけか、彼女が一方的に怒られた。
「ごめんね、直くん、怪我はなかった?」
と僕は謝られてしまった。
そして、
「直のせいで怒られちゃったでしょ!?」
と後で彼女に睨まれてしまった。
しかし、幸い彼女はあまり怒っていなかった。
僕が霧吹でシュッシュと水を吹きかけると、
彼女はキャーキャー逃げ回ってくれた。
でも、そんな彼女の逆鱗に再び触れてしまった。
きっとこっそり近付いて服のすき間を狙ってシュッシュと
したのがまずかったんだろう。
彼女はホースを取り出し、
僕に思いっきり水をかけてくれた。
もしも、僕が火だるまになって燃えていたらこれ位水をかけて欲しいな
ってくらい、勢いよく水をかけ続けてくれた。
おかげで僕は全身びっしょりと濡れてしまった。
そして彼女は叔母ちゃんにまた怒られていた。
その後、彼女はもう一度言ってくれた。
「直のせいで怒られちゃったでしょ!?」
それでも、この日は幸せだった。
大好きな彼女と一緒に過ごせたんだから。
例え、怒ると多少凶暴でもね。

ところで、好きな女の子の前でいい格好をしようなんて
思ってしまうのは僕だけじゃないはずだと思う。
特に、素直じゃない僕にはそれ以外に
彼女の気を引く方法がないからね。
僕があんな愚行に走ったのもきっとそのせいだ。
その日は部活もなく、僕は友達と一緒に学校から帰るところだった。
本当は彼女と一緒に帰りたかったけれど、
彼女は僕のことなど気にもせずに
自分の友達と一緒に帰ってしまったからだ。
しかたなく、あいつと一緒に自転車のペダルを漕ぐ僕は、
きっと腐った魚のような目をしていた気がする。

学校の校門を出たとき、そんな僕の目が
自転車でゆっくり坂を下る女の子の姿を捕らえた。
一際長い髪をなびかせる小柄な後ろ姿、
間違いない、彼女だ!
とたんに輝きを取り戻した僕の目、
身体中にみなぎる力、
はずむ心、
いつの間にかペダルを漕ぐ足に力が入っていた。
彼女が一人でいたなら、
あいつのことなんてきれいさっぱり忘れさって、
彼女に声をかけて一緒に帰ったと思う。
でも、実際は違う。
彼女の両サイドには他の女の子の姿があった。
それでもとめどなく溢れる力、
妙に浮かれる心、
加速する自転車。
いつの間にか僕はあいつを振りきり、
彼女達を一瞬で追い抜き、
ついでに目の前に立ちはだかった原付自転車の
小母ちゃんをぶち抜いてしまっていた!
この現象を一言で言い表すなら、若い青春のエネルギーの暴走、だろうか。
しかし、坂が終わるととたんに失速し、
後ろに小母ちゃんの唸りが迫ってきた。
ここで抜かされると彼女に見らるかもしれない、
いやダメだ、さっき抜かしたのに力尽きて抜き返されるなんてかっこ悪い!
そんな思いだけが必死にペダルを漕ぎ続けさせた。
そして彼女の視界から消えたとたんに力尽きた僕を、
小母ちゃんは爽やかに抜き去って行った。
彼女の姿に惑わされた僕の心は、
限界を超えて身体に鞭打った。
そして燃えつきた。
これはきっと典型的な若いエネルギーの暴走だ。
残るのは絶望的な疲労感と、家までの果てしない道のりのみ。
でも、こんなことで彼女の気を引くのはちょっと難しい。
せいぜい、やっぱり僕って変なやつだって確信を強めさせただけだろう。

ところが翌朝、彼女は突然思いもよらない事を言い出した。
「無理して私と一緒に学校行ってくれなくていいよ。もう道も覚えたから」
と。
「え!?どうして??」
僕は冷静を装ってみたけど、内心はびっくりだった。
そして焦っていた。
だって、これからもずっと彼女と一緒に学校に行けるものだと
思っていたんだから。
「だって私自転車漕ぐの遅いでしょ?
直一人だったらもっと早く行けるんじゃないの?」
なんて、珍しく彼女が僕に気をつかってくれた。
と言うよりも、よりによってこんなときに。
でも僕は彼女と一緒に学校に行きたいんだ、
なんて事はどうしても僕の口が言ってくれない。
「毎朝叔母ちゃんの朝ごはん楽しみにしてたのに…」
と、代わりに言ってくれたくらいだ。
「ほんと?無理してくれなくていいよ?」
としつこい彼女。
ひょっとして彼女は僕と一緒に学校に行くのが嫌なのかな?
なんて思わず心配してしまった。
でも普段の彼女ならはっきりと、そう言ってくれそうな気もするし…。
「朝からそんなに頑張って学校に行く気になんてならないよ」
と言っても、まだ納得してくれていない様子の彼女。
「そんなこと気にしなくていいから……一緒に学校行こうよ」
たったこれだけのことを、僕はやっと言えた。
そして気恥ずかしくなってしまった。
「わかった、じゃあ一緒に行ってあげるよ」
と彼女が言ってくれた。

翌朝、いつもの様に彼女の家に行くと、
叔母ちゃんが何やら誤解をしていた。
「直くん、美奈ちゃんと一緒に学校行ってくれないって本当??
また美奈ちゃんが何かしたの?
それだったらちゃんと謝らせるから一緒に行ってあげて」
なんて叔母ちゃんに迫られてしまった。
「え?うん。いいよ」
なんて僕は答えてしまった。
「本当?よかった〜。ありがとう」
と何だかほっとした様子だった。
「じゃあ今日は直くんの好きなウィンナーいっぱいいれてあげるね」
と朝食のおかずにおまけが付いた。
何だかよくわからないけど、
叔母ちゃんは僕のこと気に入ってくれてるのかな??
まぁそうじゃないと毎日朝ごはんなんて食べさせてくれないだろうけど。
なんて思いながら、いつもの様にゆっくり支度をする彼女を待った。
相変わらず片想い中だけど、取り合えず僕は幸せだ。


続く
-------------------------------------------------------------------------

今回は、また発行が一週間遅くなってしまいました。
まぁそれには訳があるんですよ。
パソコンが発火してしまったっていう大変なわけが。
まぁデータは無傷で無事に治ったんですけどね。
その辺の詳しい話はblogに書いたのでそちらをどーぞ。
そして、今卒業研究が大変なんですよ。
この間先生に、「これ、ダメダメじゃん」
なんていわれて結構焦ってるところです。
まぁそれにもメドが付いてきたから
やっとメールマガジンが書けました。
何とか一日でも書けるものですね。
明日は、紅葉の写真でも撮りに行けたらいいな。

そして前回と同じアンケートをもう一度。
協力して頂けると嬉しいです。
該当する回答のURLにアクセスするだけですから。
では質問です。
「小説は好きですか?」
一日一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=1
一週間に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=2
一ヶ月に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=3
一年に数冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=4
一年に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=5
数年に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=6
今まで数冊くらい読んだことがある
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=7
それは資源の無駄遣いだと思う
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=8
読書感想文反対!
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=9
新聞で読むのはチラシだけ
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=10a
私は最近、本を買いました。いつもの雑誌じゃなくって。
でも小説じゃないんですけどね。
タイトルが思い出せないのでまた次回にでも。

さて、次回予告ですが、
今度こそきっと、
二人で喫茶店に行った辺りのお話です。
それから何か部活の絡むようなお話です。
たぶんそんなお話を書きます。

[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

◆ブログ&サイト&メルマガ紹介メルマガ!◆
ブログとサイトとメルマガのご紹介がメインです。(その他色々やってます)
登録はこちら ULR: http://melten.com/osusume/?m=20006&u=21315

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「 数学嫌い、理科嫌いを無くそう!」を合言葉に皆さんからの疑問・質問を
受付けて答えていきます。読者ひとりひとりが生徒となり先生となる新しい
形の授業形態です。みんなで、メルマガ盛り上げましょう!!
登録は http://melten.com/osusume/?m=19860&u=21315
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************
*****************************************************************
人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 9

今回もメールマガジンそのまま掲載だよ。
まだブログ用に手直しする手間をかけるほど
見てくれてる人が多いように思えなくって…。
そもそも迷い込んだだけかもしれないし…。
******************************************************************
こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

今回も相変わらずなかなか進展しない二人のお話です。

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 9

僕の彼女は従妹で、家も近い幼なじみでもある。
そして僕の母親と彼女の叔母ちゃんが姉妹同士で、
仲がいい。
そんな環境のおかげで僕と彼女も仲良くなれたのかもしれない。
とは言っても彼女が僕の彼女になってくれたのはまだ先の話だけれど。

男の子にとって女の子の手料理は格別なものだと思う。
毎日母親の手料理を食べているけれど、
"女の子"が作ってくれるものとは違う。
まだ未成熟な女の子が慣れない手つきで僕のために
一生懸命作ってくれたっていうところが嬉しいんだ。
特にそれが大好きな女の子だとね。
多少まずくても食べられれば問題ない。
むしろ、「失敗しちゃった!」なんて言いながら、
頑張ってくれる初々しさが嬉しいのかもしれない。

僕にも、そんな憧れのイベントが、
ある日、唐突に起こった。
その日は家に僕一人だけだった。
いつもより遅めに目を覚ますと既に家の中には僕一人だけだった。
「ご飯は残り物で適当に食べておいて」
と昨日の夜に母親が言っていた言葉を思い出した。
それだけで少し食欲が治まってしまった。
そんなときにピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
起きたばかりの格好で出て行くのもはばかられるけど、
他人の訪問にしては少々礼儀しらずなほど
チャイムが連打されていた。
誰かと出てみれば彼女だった。
とりあえずいつもの様に家の中に招き入れた。
「今日は直一人?」
と家の中できょろきょろしている彼女が言った。
「そうだよ。何か用でもあったの?」
と尋ねると
「ううん、別に。暇だから遊びに来てあげたんだよ」
と彼女が言った。
特に用もないのに彼女が遊びにくる、
それは珍しいことではないけれど、
僕には嬉しいことだった。
「それにしても、よくそんな格好で出てこれるわね!
だいたいいつまで寝てるのよ!?」
と、僕を見た彼女に怒られた。
でも、僕は逆に何だか嬉しくなった。
大好きな彼女が怒ってくれるんだから。
「こんな朝早くに来るなんて迷惑だよ」
と言ってみた。
世間一般にありふれている時計の針は1時すぎを指していたけれど、
僕の体内時計は朝ごはんの時間を告げている。
だから冷蔵庫に頭を入れて残り物とやらを捜索してみても
見当たらなかった。
捜索するほど中身は詰まっていないのになぜだか見つからなかった。
頭を出してふと流し台の上をみると、
僕の探し物が入っていたと思われる空っぽのお皿が置いてあった。
犯人の見当はついている。
「冷蔵庫の物は私の物」が口癖の様な妹、舞の仕業に違いない。
残り物とは言え僕のお昼ごはんを食べてしまうとは、
なかなか腹のたつ奴だ。
文句を言いたいときにいないから更に質が悪い。
僕がぶつけようのない怒りに震えていると、
彼女が気づいてくれたようだった。
「どうしたの?まだご飯食べてないの??」
と。
「う〜ん…。舞が僕のご飯食べやがっちゃったしね…」
という僕の言葉は、自分でもわかるくらい悲しげだった。
「ふ〜ん…」
それから一瞬の間を置いて、彼女が思いがけないことを口にしてくれた。
「直がどうしてもって言うんだったら、私が何かつくってあげても良いよ」
と。自分の耳を疑ってしまうほど、思いがけない嬉しい言葉だった。
「本当?良いの??作ってくれるの???」
なんて聞き返してしまうほどに。
「良いよ、簡単なのだったらね」
と彼女は言ってくれた。
「じゃあ作って」
とお願いした。
こうして僕は突然彼女に手料理を作ってもらえることになった。

「何が良い?オムライス?」
と彼女が聞いてくれた。
僕は、彼女に何が作れるのか、
そしてこの家にあるもので一体何が作れるのかもわからなかったから、
任せることにした。
「じゃあそれで」
とは言っても、全部彼女に任せっきりじゃ、
彼女が拗ねちゃうかもと心配になったから、
いつもはしないお手伝いをしてみようと思った。
でも彼女が僕にさせてくれたのは、材料と道具を取り出すことだけ。
ウィンナーでも切ろうかなと、包丁を握ったものの、
「直邪魔!あっち行って!」
と彼女に怒られてしまった。
だから僕は少し離れたところで見ているだけだった。
やっぱり彼女はお料理が上手だった。
「女の子は家事さえできれば幸せになれるのよ」
なんてちょっと時代遅れとも思えるような事を、
信じて疑わない叔母ちゃんの英才教育を
受けただけのことはある。
15才にしてはやや小柄な体格の少々幼くも見える彼女が、
あまりにてきぱきと料理をこなす様は一種異様にも感じられる。
ドジっ娘の気がある彼女だけれど、
「失敗しちゃった!」なんて、このときは言ってくれなかった。
正に完璧とも言える。
きっと手抜き上手な僕の母親以上だろうな。
それからしばらくして。
「できたよ」
と、彼女が僕の前に持ってきてくれたオムライスは
非の打ち所がなかった。
卵が形を崩すこともなくふんわりとご飯を覆っていた。
ケチャップがちょっと少なめだったけれど、
薄味なのは健康指向な叔母ちゃん流ってところかな。
もちろん、味の方だって文句のつけようがなかった。
ただでさえ憧れの女の子の手料理、
しかも熱烈に片想いをしている彼女のものなのに、
その上とてもおいしかった。
正に初めてのおいしさ、
きっと僕の母親にはこんな味はだせないなって感じだ。
そんな感動に浸っている僕の顔を、
向かいの椅子に座った彼女が心なしか心配そうに見つめていた。
「ママみたいに上手にはできないけど…おいしい?」
と彼女が聞いてきた。
その姿はやっぱり叔母ちゃんに似ていた。
毎朝学校に行く前に、迎えに行った彼女の家で
御馳走になる叔母ちゃんの朝ご飯。
彼女の妹のさやかちゃんが出かけてから、
彼女が着替えを済ませて姿を現すまで叔母ちゃんと二人っきり。
僕が黙々とご飯を食べているところに、
叔母ちゃんが僕の向かいに座っていろいろ喋ってるんだ。
何だか少し嬉しそうにね。
ちょうど今僕の前にいる彼女の様に。
やっぱり親子だね、なんて思った。
きっと、これが噂に聞く幸せってものなんだろうな。
ちなみに、彼女は後片付けを一切してくれなかった。
片付けるのは面白くないらしい。

そんな僕と彼女の関係は、相変わらずただの従妹、ただの幼馴染にすぎない。
でも、高校に入ってから出会った人達は、みんな誤解してくれるんだ。
二人は付き合ってるの??ってね。
僕は周りからそう見られる事をあまり気にしない。
むしろ、彼女に片想いをしている僕の追い風に
なってくれるんじゃないかと淡い期待をしているくらいだ。
でも、心なしか彼女の方は迷惑そうに見えてしかたがない…。

そんなことを強く思ったのは、5月のある放課後の部活の時間だった。
その日の朝はあいにくの雨模様だった。
それでも僕も彼女もしっかり水着の用意はしていた。
だって、室外プールとは言え、
雨が降ってもプールに入れば濡れるのは同じ事。
それが中学の水泳部の常識だった。
でも、この高校のやる気のない水泳部は違った。
少しでも雨の気配がしたら中止と言うのが、
この水泳部の暗黙の了解だったらしい。
それを知らなかったのは一年の中でも僕と彼女だけだった。
例え放課後は晴れていても、
朝が雨模様ならみんな水着は持ってこない。
だから顧問の先生まで、今日は部活をやる気がなかったようだ。
でも僕達は勝手に泳ぐことにした。
せっかく水着を持ってきたんだし、せっかく晴れているんだし。
でもあいにくその日は二人っきりの部活にはならなかった。
どういうわけか、学校に水着を置いておいたという、
彼女の友達の一年女子も邪魔をしに来るらしい。
たしか「亜里砂ちゃん」と彼女が呼んでいた。
でも、その亜里砂ちゃんはなかなかプールに姿を現さなかった。
「亜里砂ちゃん来るって行ってたのに…」
と寂しげに彼女が呟いた。
「きっと逃げたんだよ、まだ寒いし」
と僕は思った。
僕達はとりあえず泳いで待つことにした。
そう言えば、高校に入って彼女と一緒に泳ぐのは初めてだった。
いつも、彼女が泳ぐ気になった時、僕は寒くてプールサイドで
振るえていたからだ。
せっかく他に誰もいないんだし、と
僕は真中のコースで悠々と泳ごうと思った。
「直、ここで泳ぐの?もっとはしっこにしよ」
と彼女が僕を誘ってくれた。
それなのに、それなのに、僕の口はまた素直じゃないことを言い出した。
「何馬鹿なこと言ってるの!?エースは真中に決まってるでしょ!」
等とたわけた事を口走ったことは問題じゃない。
「美奈は一人ではしっこ行ってれば良いじゃない」
と、せっかくの彼女の誘いを断ってしまったことだ。
僕が心の中で後悔する前に彼女が次の言葉を発した。
「そんなこと言わないで怖いから一緒にはしっこ行こうよ」
と言いながら彼女は僕の腕を掴んで引っ張った。
もちろん、そこまで言われて真中のコースに拘る理由なんてない。
大人しく一緒にはしっこに移った。
どういうわけかそのはしっこのコースは、コースを区切るコースロープが
一本足りていなかった。
だから、そこだけ二コース分の幅があった。
こんなところにも部活のやる気のなさが現れている。
彼女がこんなコースをわざわざ選んだのは理由がある。
まず、プールの一番真中の底には排水口がぽっかりと
暗くて大きな口を開けている。
もちろんその上には丈夫な金網がしてあるけれど、
彼女はそこに近付くことを何故か怖がる。
だから真中のコースには近付きたがらないんだ。
そしてもう一つ、反対側の端のコースなら
建物の影になって陽があたらなくて寒いんだ。
そして水中もちょっと薄暗い。
だから彼女はこんな広いところを選んだ。
もちろん、泳ぐのに支障はないわけだけれど。
それから一緒に練習していると
僕はあることに気づいた。
彼女が僕の後にぴったりとついて来るって事にだ。
一緒のコースで練習していても、
練習内容なんて決まってないから勝手に泳いでいるだけなのに、
なぜか彼女がぴったり僕について来る。
僕が止まれば彼女も止まる。
偶然にしては、ずいぶん彼女の息が上がっていた。
こんなに寒いのに泳ぎたがるくらいだから、
練習熱心なんだな、なんて僕が思い始めた直後のことだった。
きりの良いところまで泳いで立ち止まると、
後ろについてきているはずの彼女がいなかった。
今泳いできた方に視線を戻してみると、
真中あたりでバシャバシャしている彼女の姿があった。
彼女が何をしようとしているのか、
僕は理解できずに少し考え込んでしまった。
だって、さっきまであんなに頑張って練習していたのに、
急に遊び出すなんておかしなことだ。
いや、はしゃいでいるにしては様子がおかしすぎた。
見たままの光景を素直に判断すると、
溺れていると考えるのが自然な感じだった。
でも、まさか彼女が溺れるわけがないと僕は思った。
だって彼女の水泳歴は僕と同じくらい長い。
だから例え両足を縛られて、海よりも深いプールに放りこまれたって、
溺れたりするはずがない。
でも、目の前の彼女は溺れていると言う他に表現のしようがない。
まさか、と思いつつも彼女に近付き様子を伺おうとすると、
突然彼女が僕にしがみついてきた。
もちろん僕はびっくりした。
彼女に急に抱きつかれたって事と、やっぱり溺れてたんだって事にだ。
僕は彼女のお腹のあたりに腕を回して、
数メートル先のプールサイドに向かった。
たった数メートルとは言え、
彼女を抱えているとなかなか前に進めないもどかしさと、
僕の腕から伝わってきた予想以上のやわらかな感触が
しっかりと記憶に残っている。
彼女はプールから出ると慌ててアキレス腱を伸ばし始めた。
「ひょっとしてさっき溺れてたの??」
と、少しいやみっぽく聞いてしまった。
「ち、違うもん!足つっただけだもん、溺れてないよ!」
と少し慌てた様子で彼女は否定した。
やっぱり溺れただなんて彼女も認めたくないのかもしれない。
「準備運動もろくにしないでとばすからじゃないの?」
と思った。
「だって直速いし、一人で泳いでたら怖いでしょ」
だって。だから僕にぴったりついてきていたのか。
「そう言えば、この間も足つってなかった?」
と言ってみた。
「直が邪魔しなかったら今日だってこの間みたいに
ちゃんと自分で上がれたんだよ!」
と彼女は言った。
この間足をつったときは、本当にプールサイドの近くだった。
でも、なぜだか高い方のプールの壁から上がろうとして
苦労いる彼女に手を貸してあげたことをはっきり覚えている。
だから彼女が足をつったのは二度目だ。
初めてならまだしも、二度目なのに慌てて溺れてしまうとは
彼女らしいかもしれな。
とは言えプールのどこにいても、
頭まですっぽり水に浸かってしまう彼女には、
動かない足の痛みに耐えながらプールサイドまでたどり着くのは
大変なのかもしれない。
やっぱり小柄な彼女にはこのプールは大きいのかな。
でもすぐ近くにあるコースロープにしがみついていれば良かったのに…
なんてことは言わずに心の中にしまっておいた。
そんなときにすっかり忘れていた例の亜里砂ちゃんがようやく姿を現した。
「何やっててたの!?遅いよ!!」
と、まだ足を伸ばしている彼女が文句を言った。
「ごめん、再テストになっちゃって」
と言い訳をしていた。
再テスト、毎朝やってくれる
朝の小テストに不合格になった者が受けさせられるあれの
犠牲になってしまったらしい。
そして亜里砂ちゃんとやらが続けた。
「それに、イチャイチャ仲よさそうにしてたから
邪魔しちゃ悪いと思ったし」
その娘がそう言うということは、
しばらく前からこっそり覗いていたんだろう。
そしてそれに彼女が反応した。
「何変な事言ってるの!?私と直は従弟だって言ったことあるでしょ!?」
と少々むきになっているように思えた。
「プールに二人っきりなのをいいことに、
抱きあったりする関係を従弟って言うの??」
と亜里砂ちゃんとやらは言った。
こっそり隠れて覗いていたその娘には、
どうやらそんな風に見えていたらしい。
そしてその直後、彼女がひどいことを言った。
「何で私が直なんかに抱きつかなきゃいけないのよ!!?」
と。
それは僕の恋する心をグッサリ貫いて、
えぐり出されたかのような悲しみを与えてくれた。

ふと我に返ったとき、僕は一人で自転車に乗っていた。
今日も一緒に帰れるかな?と期待していた彼女は
あの娘と一緒に帰ってしまった。
そして僕は一人寂しく自転車を漕いでいた。
ひょっとして彼女は僕のこと嫌いなのかな?
なんて事しか僕の頭には浮かんでこなかった。
また僕の片想いで終わるのかな…なんて
諦めの気持ちさえ湧いてきそうなくらいだった。


続く
-------------------------------------------------------------------------

今回は、また発行ぎりぎりになってしまいました。
いつも午前6時に発行しているのに、
今は午前4時15分前…。
きっと今夜寝れるのは5時くらいになりそうな感じです…。
本当は明日も早起きして9時に起きて
お出かけする予定だったんですが…
今週のお出かけは諦めます…。
あぁ…お腹減った…。
卒業論文早く書かなきゃ…。
あ!今日は英語の勉強してない…。
TOEICの申込も早くしなきゃ…。
やることいっぱい…。
600点って難しいのかな??

今回は、久しぶりにアンケートをとってみようと思います。
協力して頂けると嬉しいです。
該当する回答のURLにアクセスするだけですから。
では質問です。
「小説は好きですか?」
一日一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=1
一週間に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=2
一ヶ月に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=3
一年に数冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=4
一年に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=5
数年に一冊は読む
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=6
今まで数冊くらい読んだことがある
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=7
それは資源の無駄遣いだと思う
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=8
読書感想文反対!
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=9
新聞で読むのはチラシだけ
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=14&answer=10a
ちなみに私は「数年に一冊は読む」くらいです。
いわゆる専門書とか技術系雑誌ならよく読むんですけどね。
ちなみに、そんな本の文中にさりげなく書かれているジョークが好きです。
あのジョークのセンスは格別だと思っています。
ギャグマンガなんかじゃ到底出せそうにない味です。
密かに意識しています。

さて、次回予告ですが、
相変わらず二人の仲はほとんど進展しません。
せいぜい二人で喫茶店に行った位です。
たぶんそんなお話を書きます。

[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

--------------------------------------------------------------------
メルマガ「アニメグッズぷれみあむせれくしょん」(不定期発行)
 まんが、アニメグッズ、DVDなどの最新情報や人気ランキングをお送
 りします。つい買い忘れた大人気グッズや、まだ誰も持っていない
 レアグッズも、きっと見つかるよ。
メルマガ登録はこちら >> http://www.mag2.com/m/0000171906.html
--------------------------------------------------------------------

現役女子高生・・・ってヵもぉ卒業とヵ!!
まぁ一応現役女子高生の感じてる事をそのまま書ぃてぃきます↑↑
ほんとに今まで色々なコトを経験してきましたo
普通の人が経験しなぃだろぅこともoo
そんなぁたしの経験を少しづっ話してぃく事も含めてぁたしの本音を語った
り、詩にしてみたり・・・
ほんと何考ぇてんだって思ゎれるヵも?!笑
今の女の子らしぃトコもぁれば、全然!!ってトコもぁるだろぅヶど聞ぃてみてく
ださぃ☆
ぁたしの目ヵら見た、ぉ勧めのものとヵも気紛れで載せるヵもw
http://melten.com/osusume/?m=20049&u=21315
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************
******************************************************************
人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 8

また、メールマガジン
そのまま掲載だけどね。
まぁある程度見てくれている人が
いるってわかれば、
そのうちブログ用に手を加えて
みるかもしれないけどね。
++++++++++++++++++++++++++++++++

こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 8

僕の彼女は怖がり屋さんだ。
平均的な高校生よりも臆病なほうだと思う。
怖い話や、怪談特集の番組なんかには
間違っても近付こうとしない。
ときに激しく轟く雷鳴にさえ
びくびくと怯えているくらいにだ。
そんな彼女にとって、放課後の学校と言うのは
なかなか趣のある場所だと思う。
特に、学校の隅にある、静かなプールは。

ようやく遅めの初泳ぎを済ませた翌日。
その日も当然部活はあった。
僕も彼女ももちろん行った。
それなのに、他の部員の数は昨日より減っていた。
あの騒がしい一年男子共は全員来ていたけれど、
女子は彼女と部長以外の姿は見当たらなかった。
一見するとやる気のない部活に見えるけど、
悪いことばかりでもないんだ。
だって、人が少ないとプールが広く使えるんだから。
練習するにはむしろ良い環境だとも言える。
だから僕はもちろん泳いだ。
相変わらず水はまだまだ冷たいけれど、
衰えた体力を早く回復させたいんだから
温かくなるのをのんびり待ってもいられない。
彼女だって、もちろん今日も泳ぐものだと僕は思っていた。
でも今日の彼女は制服を着たままプールサイドのベンチに座っていた。
「泳がないの?」
と聞いても
「うん…」
と答えるだけだった。
でも実はどこか泳ぎたがっているようにも見えた。
ドジな彼女のことだから、水着でも忘れたのかな?
なんて思いながら、あまり気にせず練習をした。
と言っても、やっぱり寒いから三十分もしないうちに我慢の限界を迎えた。
プールからあがり、再び彼女が座っているところに向かった。
と、いうのも僕が荷物を置いておいたそこに
彼女が座っていたからだけれど。
「はい」
と言って、座ったままの彼女がタオルを手渡してくれた。
「ありがとう」
なんていいながら受け取った。
ふと、荷物の方に目をやると、僕のシャツがきれいに畳まれていた。
少し離れたところにある更衣室からプールまで
いつも水着の上にきてくるシャツだ。
今日も適当に脱ぎ捨てておいたはずなのに。
「畳んでくれたの?」
と聞いてみた。
「そうだよ、わざわざ私が畳んであげたんだよ」
って言ってくれた。
そうしたら何だか嬉しさが込み上げてきた。
ただ、シャツを一枚畳んでくれただけなのに…
彼女が畳んでくれたんだと思うと嬉しくてしかたがなかった。
またシャツを着るのがもったいないくらいに。
僕の母親が毎日服を畳み続けてくれても、こんなに嬉しくはないはずなのに。

そして翌日ももちろん部活はあった。
今日は、遂に部長さんもこなくなってしまい、女の子は彼女だけになった。
そして彼女はまた今日も泳ごうとしなかった。
ただ、昨日と違っていたのは、彼女が体操服を着て
見学をしていたということだ。
「今日も泳がないの?」
とベンチに座っている彼女に聞いた。
「うん…」
とだけ答えた彼女だったけれど、
僕にはもっと何かを言いたがっているように思えた。
でもその時はそれ以上話してくれなかった。
そしてその日も、僕は長く水の中でバシャバシャしていることはできなかった。
あの連中は何であんなに元気なんだろう?と
騒がしい他の一年男子共を他所にプールから上がった。
そしてプールサイドでタオルにくるまって、彼女と一緒に見学をしていた。
まだ先輩も頑張っていることだし、先に着替えてしまうのは気が引けたんだ。
しばらくすると、先輩も上がってきて、
さらにその後にあの連中もようやく水の冷たさに気づき、上がってきた。
そしてそろって更衣室に戻ろうとした時だった。
「ねぇ、直…」
と、彼女が遠慮がちに僕を呼び止めた。
「何?」
と聞いてみても、彼女は珍しく話を切り出し難そうにしていた。
おかげで他の皆の姿は見えなくなってしまった。
「どうしたの?言い難い話??」
僕がそう言ってからほどなく、彼女がしおらしく話出した。
「私も泳ぎたいんだけど…」
そう言うと、やや上目使いで
僕の表情を伺うような仕草をみせてから続けた。
「直、待っててくれない…?」
と申し訳なさそうに。
「ええぇ〜〜〜〜〜〜?!?」
って、僕は言ってみた。
彼女と一緒にいられるんだから、もちろん僕は嫌じゃなかった。
むしろ、彼女と二人っきりになれるチャンスだ。
でも、僕の口は相変わらず素直じゃなかった。
「せっかく私が特別に水着見せてあげようって言ってるのに…」
と言う彼女が、少し落ち込んでいるようにも見えた。
悪いこと言っちゃったかな?なんて少し心配しながら、
気になっていたことを聞いた。
「別に良いけど、どうしてさっき泳がなかったの?」
と。
「だって……男の子の視線が何か嫌だったんだもん…」
と俯き加減に答えてくれた。
近くで騒がしい男子共の会話を聞いていた僕にも、
その視線にいくらか心当たりがあった。
「じゃあ一人で泳げばいいのに」
なんてうかつなことを口にしてしまった。
「だって………」
と言ってから彼女は更に言い難そうに続けた。
「…怖いんだもん……」
なるほど、と思った。
そう言えば彼女は怖がり屋さんだ。
そして、確かに一人のプールは少し怖い。
校舎の影に隠れた放課後の学校のプールだ。
特に水の透明度が低いときはなおさらだ。
そこにありきたりな怖い話でも聞かされたら、
僕だって一人で入れる自信はない。
でも、彼女と二人っきりになれるなら理由なんてなんでも良かった。
だから、もちろん僕は彼女を待つことにした。
「いいよ、じゃあ待っててあげる」
そう言うと、彼女は嬉しそうに体操服を脱ぎ始めた。
どうやら始めからそのつもりだったようで、下に水着を着込んでいた。
そう言えば、彼女の水着姿を見るのは久しぶりだ。
この間も見たけれど、目の悪い僕には遠くからじゃ見たとは言えない。
でも、今日は彼女が目の前で水着姿になってくれた。
「なんかこの水着ちっちゃくなっちゃったのよね〜」
なんて言いながらだ。
それをじろじろ見ていると嫌がれるんじゃないかと思っても、
やっぱり気にならないわけがない…。
だって男の子だもん。
水着が小さくなったって言うだけあって、
やっぱり彼女は去年より成長したのかな?
なんて思いながら、目がちらちらと彼女を追っていた。
小柄な身体の割りには膨らみのある胸がどうしても僕の視線を引き付けるんだ。
制服の冬服をしっかり着込んでいてもそれがわかるくらいだから、
水着姿になればやっぱり他の男共の視線まで集めるのも
しかたのないことかも知れない。
とは言っても彼女がそんな視線に晒されるのは僕だって嫌だ。
なんて思いながらもやっぱり僕の目は他の男子共と同じ様なことをしていた。
でも彼女が僕のすぐ近くに来て話をしてくれるとやり場に困った目が泳いでしまう。
そんな僕を他所に彼女は
「きれいに畳んでおいてね」
と脱いだ体操服を僕に渡すと、
僕に背を向けてゆっっくりと水の中に入っていった。
そんな彼女を見つめていて、僕はふと気になった。
彼女は僕の視線に気づいてしまっているんだろうか。
だとすると、僕もやっぱり他の男子共と同様に嫌がられるのかな?とか。
それとも、僕には見せてくれてるのかな?なんて
勝手なことを考えてみたりもした。
あるいは、ひょっとすると彼女は僕が男の子だって事を忘れちゃってるのかな?
つまり、彼女は僕を男の子として意識することなく、
ただの従弟か幼なじみとしてしか見ていのかな…?なんてね。
それから、まだ温もりの残る彼女の体操服を畳むことにした。
そう言えば、彼女の服を手に取ってじっくり見るのは初めてかもしれない。
学校指定だから僕が持っているのと同じ体操服だけど、
やっぱり、明らかに少し小さいのがわかった。
こんな小さなものに彼女の身体が納まるのかなんて思っていると、
無性に彼女の体操服を抱きしめたい衝動に駆られた。
もちろん、そんなところを彼女に見られると大変だから、
その想いはこっそり心の中にしまっておいた。
でも、彼女の可愛い匂いのする体操服を見て、
なんだか嬉しい気持ちになっている僕は変なんだろうか…。
そう言えば、彼女が泳ぎ始める前に着替えておけば良かった、
と少し後悔した。
いつまでも水着姿だと寒いのに、
一瞬たりともプールサイドから姿を消さないようにと
彼女に念を押されてしまったからだ。
クシュンッって感じだ。

その日以来、みんなが帰ってから
彼女と二人っきりで部活を楽しめることになった。
思えば、彼女が怖がりなおかげで、
僕達は仲良くなれたのかもしれない。
でもそれはまたしばらく先の話だ。

続く
-------------------------------------------------------------------------

今回はほんの少しだけいつもより短めです。
前回は、長くなりすぎたからって
二分割したのに、
今回の発行直前になって実はそれは私の
気のせいだったって事が判明しちゃって、
今回は少し短めなんです。

そう言えば、今回でようやく5月のお話に入りました。
この調子だと、一年分書くのにどれだけかかるのかな〜?
っていうか、途中で飽きちゃわないか心配です。
そろそろ卒業研究の論文の方も
書きはじめなくちゃいけないので。
5月頃に卒業研究をほぼ終わらせちゃった
人が羨ましいです…一緒の研究室にいるんだけどね。
そう言えば関係ないけど、
先生のお誕生日だったので、
お誕生日会に参加してきました。
当日急に声をかけられたので、
プレゼントなんて用意しているわけもなく、
ケーキだけおいしく頂いて来ちゃいました☆
でもおいしくケーキを頂いていたはずなのに、
どういうわけか先生と大学院生さんたちが
数学と物理の話で盛り上がってました…。
どうしてそんなに話がそれていくのか甚だ疑問です。

そして次回予告ですが、
まだあんまり決まっていません。
とりあえず、直くんが美奈ちゃんに
お昼ごはんを作ってもらったりとか、
美奈ちゃんが新しい水着を着て見せてくれたとかの
話を書くかもしれません。


[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

■■■■猿まじの自作小説!!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
●作者(sarumaji)が書いている小説をお送りするメルマガです!!
●連載されている小説は現在『ラブラルの狩人』と神崎物語』です!
○2004年4月より、新連載『戦国傭兵譚』!!
●今回の一言コーナーでは日頃考えている事や神話に出てくる神様などを掲載!!
●気の向いた人!読んでやってください!!
●登録用URLは http://melten.com/osusume/?m=6120&u=21315
▲▲▲▲皆で読もう!!▲▲▲▲

☆〜〜☆〜☆FOR ME☆〜☆〜〜
   知ってる人には言えない
     私の気持ち達
 ずっと偽りのままでなんていられない
  どうか、私に居場所をください
 でも恥ずかしがり屋なので本音は
http://melten.com/osusume/?m=20069&u=21315

*〜〜*〜*〜〜*〜*〜〜*〜*〜〜*〜*
[終り]
**********************************************
+ F日記 spec.M 僕の彼女編は
mooによって発行されています。
+ 感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
+ 登録解除、バックナンバー、その他は
http://moox.or.tp/fnikki/
**********************************************


++++++++++++++++++++++++++++++++
人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

僕の彼女 7

これは私がメールマガジンで
発行している話なんだけどね。
私が妄想したものを200行ほどに
書いた、ほとんどフィクションの
話でね。
メールマガジンだけじゃなくって
このブログでも公開してみようかな?
と思って、試してみたんだよ。
メールマガジンで公開した文章を
そのまま載せてるだけなんだけどね。
もしも、こんな話を気に入って
くれるような人がいたら、
メールマガジンでの購読も
検討してね。
取り合えず、これは8話目だから、
これから読み始めても、
あんまり話がわからないはずだと思うんだよ。
だから、バックナンバーを先に
読んでもらいたいな。
http://moox.or.tp/fnikki/
と、言うことで、以下は
メールマガジンで発行した
内容そのままを載せてみたよ。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


こんにちは、mooです。
そして初めましての方は宜しくお願いします。
最近ほんの少しずつ読者さんが増えていて嬉しいです。
初めての方は、まず第一話から読んでもらえると嬉しいです。
バックナンバーはこちら。
http://moox.or.tp/fnikki/

------------------------------------------------------------------
僕の彼女 7

僕の彼女は従妹だ。
そして可愛い。
なんて思うのは、彼女に心を奪われた僕だけじゃないはずだ。
客観的に見ても可愛い。
それは彼女も自覚していることで、
自分のことを可愛いと言ってはばからない。
ただし、「美人」とは形容し難い可愛さではあるけれど。
普段は大人しい彼女だが、時に心に思ったことをそのまま口に出す。
特に、僕に対しては遠慮がないように思う。
もちろん、悪気はないのだと思うけれど…。

それは、彼女と図書館に行った日のことだった。
その日もいつもの様に学校から帰ってきて、制服から着替えた。
ちょうどその直後に僕の電話がなった。
叔父さんからだった。
図書館に行くんだけど、
一緒に来ないかと言う誘いの電話だった。
叔父さんは僕をいろんなことに誘ってくれるから、
これも珍しいことではなかった。
そして僕はいつもの様に誘いを受けた。
5分ほど歩いて彼女の家に着くと、叔父さんは車の準備を済ませていた。
「乗って」
と言われるままに、助手席に乗り込んだ。
後ろの座席を見ると彼女の姿があった。
運転席の後ろでシートベルトを締めてちょこんと座っていた。
僕の方にちらりとも顔を見せようとしないまま、窓の外を見つめて。
そんな彼女の姿は、心なしかご機嫌が悪いように見えた。
叔父さんが車を走らせてから図書館に着くまで、
僕と叔父さんはいろいろ喋っていたけど、
彼女は一言も言葉を発しなかった。
気になった僕がちらちらと後ろを見たときも、
彼女は窓の外に顔を向けたままだった。
僕にはそれが、景色を楽しんでいるようには見えず、
明らかに拗ねているように思えた。
図書館の駐車場に車を止め、最後に彼女がゆっくりとドアを閉めるのを確認すると、
叔父さんは鍵を閉めて入口に向かって歩きだした。
僕も叔父さんの少し後を追って歩きだした。
途中でふと、後ろにいるはずの彼女の方を振り向くと、
彼女は車の前に俯いたまま立ち止まっていた。
叔父さんはもう中に入ってしまったけれど、
気になった僕は彼女のところに引返した。
「どうしたの?行かないの??」
と僕が声をかけると、
俯いていた彼女が顔をあげ、睨むような視線で僕の顔を見た。
そしてやっと口を開いた。
「どうして直がのこのこ着いて来るのよ!?」
そんな言葉を僕にぶつけると、
彼女は叔父さんの後を追うように走り去った。
彼女がどんな思いでそんな言葉を発したのか、
僕には想像もつかなかったけれど、
とりあえず僕は人生始まって以来の衝撃を受けた。
頭から百トンハンマーみたいなので叩き潰された感じだ。
あまりのショックに、しばらく呆然と立ち尽くさずにはいられなかった。
そして、ふと我に返ったときは図書館の中にいた。
適当な席に座り、読みたくもない本がいつのまにか開いていた。
でも僕の頭に浮かんでくるのは彼女のことばかり。
僕は何か彼女を怒らせるようなことでもしたのかな?
なんて思い返してみても、何かが出てくるわけもない。
ただ、一緒に学校から帰ってきた別れ際に彼女の見せた笑顔が浮かぶだけだ。
それも、今日のことなのに遥か昔のことのように感じられる。
これは悪魔の所業か天罰に違いない!
この悪夢から救い出してくれるなら、神様も仏様も信じよう。
なんて事を思っていると、僕の方に近付いてくる彼女の姿が見えた。
きっと悪夢の淵をさまよっている僕に
とどめを刺しにきたんだと僕は覚悟した。
どんな優しい天使様も、敵に回すと悪魔のようだ…。
しかし、彼女は僕の予想とはかけはなれた言葉を口にした。
「こんなところで何読んでるの?」
そう問いかける彼女のご機嫌はいつのまにかなおっているようだった。
そんな彼女の様子を見て僕はほっとした。
絶対にしたくないと思っていた紐なしバンジーを、
飛び降り台に上ったところでやっぱりしなくていいと言われたような気分だ。
「面白いの?これ」
僕が彼女の問に答えないでほっとしていたから、
彼女が僕の本を覗き込んできた。
「つまんないよ、きっと」
と答えてみた。まだ一文字も頭に入ってないんだけれどね。
「何でそんなの読んでるの??」
と不思議そうに尋ねる彼女。
しかし、僕の答えを待たずに次の言葉を発した。
「そうだ!そんなの読んでないでちょっときて」
彼女がそう言うから、僕はなぜか目の前に開いていた本を棚に戻すと、
彼女の後についていった。
トントントンと、階段を降りる度にただでさえ静かな図書館が
更に静かになっていった。
そしてたどり着いたのは地下二階。
上の階にはたくさんの人がいたのに、なぜだかここでは
他の人の気配が感じられなかった。
ひょっとしてドジッ子の気がある彼女が、
入っちゃいけないところに迷いこんじゃったの?
って思ってしまうほどに静かだった。
こんな人気のないところに僕を連れてきて、一体何をしてくれるのかと思えば
なんて事はなかった。
「この本棚動くよ!」
と言って、彼女が本棚の横のボタンを押すと、
キンコンキンコンと音をならしながら、
ゆっくりと本棚が動き出した。
なんの変哲もない電動書架だった。
でも、僕も彼女もそんなものを目にするのは初めてだった。
だから、とりあえずぽちぽちボタンを押して遊んでみるのは当然の成行きだ。
その頃には、さっき彼女にズタズタに引き裂かれた僕の心も
すっかり元通りに癒えていた。
と、言うよりそんな出来事は記憶の片隅に追いやられていた。
そして、いつもの様に彼女に悪戯をしてみたい衝動が僕の中に芽生えた。
だから、彼女が本棚の真中辺りにいるとき、
僕はポチっと電動書架のスイッチを押してみた。
別にさっきの仕返しをしてやろうだなんて
心の狭いことを考えているわけでは、決してない。
ただの好奇心だ。
キンコンと音をたてながらゆっくりと迫ってくる本棚に、
彼女は慌てていた。
慌てて走り出した彼女が軽く本棚にぶつかると、
それはすぐに動くのをやめた。
さすが、ハイテク。
「なんて事するのよ!!私を潰す気!?」
と、静かな図書館にふさわしくない声が聞こえた。
それにしても、この地下二階には全く人の気配がしなかった。
だから、ちょっとやそっと彼女が騒いでも
誰かが文句を言うこともなかった。
そんなところにしばらく二人っきりでいたせいか、
なんだか僕は少しずつ変な気分になってきた。
僕があんなことは口走ったのもきっとそのせいだろう。
「美奈は、好きな人とかいるの?」
なぜか僕の口が勝手にそんな言葉を発した。
勝手に口が動いているような感じで、自分でも驚いてしまう。
きっと僕はどうかしてたんだろう。
しかし、彼女はいつも通りに答えを返してくれた。
「どうして急にそんな事聞くの?」
僕の隣に何歩か離れた所で立ち読みをしていた彼女が、
不思議そうに顔を向けた。
でも、それは僕にもわからないことだ。
「う〜ん…別にどうって事はないんだけど…。ただ、なんとなく…」
と答えるしかなかった。
「直も知ってるでしょ?私が男の人嫌いだって」
そう答えると、彼女は手に持っていた本を棚に戻した。
なんだか僕は悪いことを聞いてしまったような気がした。
彼女が男の人を嫌がる訳を知っているからそう思ったんだろう。
でも彼女に彼氏なんてものはおろか、好きな人さえいないとわかって
嬉しくもあり、すこしがっかりもした。
だって、僕のことさえも好きと思ってくれていないんだから。
僕がそんなことを思っていると、今度は彼女が聞き返してきた。
「直は好きな人とかいないの?」
そう聞かれて少し僕は戸惑った。
だって、僕が心から想う彼女にそんなことを聞かれるなんて
考えもしなかったからだ。
でも、
「いるよ」
とだけ答えた。
「どんな子?私の知ってる人??」
更にそんな質問が続くのは、簡単に予測できることだけれど、
僕は少し返事に困った。
そして、
「うん…、美奈の良く知ってる子」
と答えてしまった。
そうすると、彼女の次の質問は大方予想がつく。
「誰??」
そう聞かれると、僕は戸惑いを隠せなかった。
そしてしばらく黙りこんでしまった。
なんと答えるべきか考えたくても頭がまともに働いてくれなかった。
ここは勢いに任せて彼女に想いをぶつけるという、
ありきたりな手段に出ようとも思った。
しかし、それはまたしても僕の口によって妨げられた。
「ひみつ」
僕がそう答えると、彼女はたちまちほっぺを膨らませて言った。
「ケチ!教えてくれたっていいでしょ!?」
それから、彼女が再びその話題に触れてくれる事はなかったし、
僕の口もそんな話をさせてくれなかった。
それから、何事もなかったかのように、彼女と一緒に本を読んでいた。
いや、僕は本を開いていただけだ。
だって、さっきのは僕に訪れたチャンスだったのかどうか…
そんな考えが僕の頭の中いっぱいに繰り広げられていたんだから。
その日はそれがずっと頭から離れなかった。
ひょっとしたら、チャンスを逃したと後悔していたのかもしれない。

翌朝は、いつもの様に日が昇ったから、
いつもの様に彼女を誘って学校に行った。
彼女が少し嬉しそうにしている以外は、いつも通りだった。
「今日から部活だね」
と彼女は僕が聞く前にその訳を教えてくれた。
そう言えば今日から泳げるんだ。水泳部だから。
彼女はずいぶん前からそれを楽しみにしていた。
僕だって泳ぐのは好きだけど、まだ五月にもなっていないこの次期に、
室外プールで泳がなければならないのかと思うだけで寒くなってくる。
とても彼女のように嬉しそうにはできない。
それなのに、彼女は放課後までずっと嬉しそうだった。
そして放課後になってプールに行ってみると、
今日が初泳ぎだと言うのに、案の定半分くらいしかいなかった。
明らかに寒そうだけれども、
このやる気のなさは中学校の水泳部といい勝負だ。
そして、実際にプールの中に入ったのは更に半分だけだった。
「寒いから無理しなくていいよ」
と、部長さんが言ってるくらいだから、
何も無理して入ることはないのだけれど、
僕もプールに入ることにした。
市立の学校とかだったら、
温かくてきれいな室内温水プールなのかもしれないけれど、
公立の学校のプールは寒くて汚いのが基本だ。
寒いのはわかってるんだけど、やっぱり好きなんだよ。
まぁ、こんな冷たいプールに飛び込んで馬鹿みたいにはしゃいでる
他の一年男子共は別だろうけど。
そう言えば、と彼女の姿を探してみると、
僕からずいぶん離れたところで、他の女の子と話ながら、
ゆ〜っくりと冷たいプールの中に
足を差入れているところだった。
と言っても、女子の中でプールに入るのは彼女だけだった。
僕はとりあえず軽く泳いでみたけれど、
半年以上も泳いでいないせいで、思うように身体が動いてくれなかった。
予想以上に身体が衰えていて驚く他なかった。
すぐに疲れると言うより、身体が勝手に動かなくなる。
これじゃあ泳いでいると言うより溺れているみたいだ。
そんな現実に僕はショックを受けつつも、
彼女のことだって気になっていた。
相変わらず彼女は女の子達と仲良く戯れていた。
彼女と一緒の学校の、一緒の部活なのに、あんなに遠くにいる…。
冷たい水の中でじっと彼女を見つめていたせいで、
急激に身体が冷えてきた。
頭は痛くなるし、身体はガクガクブルブル震え出すし、
冷たい水が前身に刺さるように痛くなってくる。
だから、僕は一番にリアイタすることになってしまった。
僕がプールサイドでタオルにくるまっていると、
ほどなくして彼女もプールからあがってきた。
いつのまにか、さっきまで彼女と仲良く話していた女の子の姿がなく、
彼女はタオルにくるまって、僕の隣にきてくれた。
「寒いね」
と彼女が言ってくれた。
「うん」
と僕が答えると、彼女が少し身体をくっつけてきた。
「直あったかい」
って彼女が言うとおり、
タオル二枚を隔てても、彼女の身体の温もりが伝わってきた。
寒いプールからあがったときにぽかぽかと温かい
春の日差しは気持ち良い。
そしてそれ以上に彼女の温もりは幸せだった。
特に彼女の行動に特別な意味があるわけではないのだろうけれど…。
「馬鹿は風引かないって言うけど…丈夫なのね〜」
そう言う彼女の視線の先には、
相変わらず騒いでいる一年男子共の姿があった。
「そうだね〜」
と僕は答えた。
すると彼女は言ってくれたんだ。
「直だって馬鹿なのに、丈夫じゃないの?」
だって。
彼女はさりげなく僕の心に傷をつけてくれる。
それなのに彼女は何事もなかったかのように話を続けるんだ。

それでも僕は彼女が好きなんだ。

続く
-------------------------------------------------------------------------

今回は、いつもより発行が1週間遅くなっちゃいました。
って言うのは、先週は資格の試験があって、
その勉強が忙しくて書けなかったからなんですけれどね。
で、1週間遅れで書いてみました。
なんだか、今回のお話はいつもにもまして
面白さがないような気がしています…。
変わりに、文章の方はいつもよりちょっとだけ良くなったかな?
なんて思っちゃってます。
本当はこの2倍くらい書いちゃったんですが、
長くなるので、半分に切って残りは来週発行することにします。
楽しみに待ってもらえると嬉しいです。

でも、これだけ書くのにずいぶん時間がかかってしまいました。
と言うのも、やっぱり私は国語能力が乏しいからですね…。
辞書で調べながら書いたり、
この表現は変じゃないかな?なんて悩んだりしながらなので。
しかも、気分が乗らないとなかなかペンって言うか、
キーボードが進みません。
とりあえず、もっと小説とか読んで勉強した方が良いのかな?
まぁ私は小説はほとんど読まないんですけどね。
どちらかと言うと、動きのある動画の方が好きで、
最近はアニメにはまってるんですよ。
むしろ小説は嫌いなほうだったんですけどね〜…。
それなのに今はこんなの書いちゃってるし…。
でも、本当はマンガが書きたかったんですよ。
いずれは自分でアニメーションなんか描きたかったんですが、
私は絵が下手で下手でしかたなく文章を書きはじめたんですよ。
私の妄想を表現するための手段としてね。
でもしばらく書いていると、これもなかなか面白いものですね。
文章は文章で、表現のしかたに工夫が必要だったり、
雰囲気を出すのが難しかったり、
文章でないと表現し難い細かいところまで書けたりして、
なかなか奥の深いものだな〜と思っています。
だから、今はもっと文章が上手くなりたいと思ってるんですよ。

そう言えば、アンケートに協力して頂いて
ありがとうございました。
まぁ回答者数は少なかったものの、
読者さんの層がわかって良かったです。
私はてっきり十代の方が多いのかと思っていたのですが。
結果は下のURLから見られます。
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/result.rb?user=moo&no=12

さて、次回予告ですが、
次回はまた部活の続きです。
半分に切っちゃったこの話の続きです。

[メールマガジン紹介]
のんびりゆったりとした時間の流れ感じて頂きながら読み終えた時に、
ほんの少し癒される、そんな小説をお届けしています。
http://www.mag2.com/m/0000162713.html

_/_/_/_/_/_/_/_/_/ プチG×GBOX _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
メルマガ限定のオリジナルBL小説と、BL小説サイトの更新情報を
メインにお届けします
ファンタジーや、リーマンなど、色々なステキ殿方カップルの小説が
読んでみたい方!ぜひぜひご登録くださいませ♪

http://melten.com/osusume/?m=14995&u=21315

◇━━━━━━━━◇━━━━━━━━◇━━━━━━━━◇
   何だかヘンな気がするけど、よくわからない
   知らずにずっと使ってた間違った敬語
   大事な時に恥ずかしい思いをしたくなかったら
   普段から正しい敬語を使い慣れておきましょうね
http://melten.com/osusume/?m=14899&u=21315
◇━━━━━━━━◇━━━━━━━━◇━━━━━━━━◇
[終り]
********************************************
感想なんか聞かせてもらえるとやる気がでます。
moo@rose.freemail.ne.jp
http://moox.or.tp/fnikki/
********************************************

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


人気blogランキングへ

| | Comments (0) | TrackBack (0)